もう1つのパラダイムシフトは、「モノの価値」の本質をハードウェアからサービスへとシフトさせることです。
かつて、モノの性能や機能、品質や操作性は、ハードウェアの「メカニズム」や「つくり込み」といった物理的実態によって実現されました。しかし、今は多くのモノにコンピュータが組み込まれ、これらはソフトウェアによって実現されています。
ハードウェアの価値が失われることはありませんが、もはやハードウェアだけではモノ全体の価値を実現できない時代を迎えています。
IoTは、この「ハードウェア+ソフトウェア」としてのモノをインターネットにつなぎ、クラウドと一体化することで、これまでにはできなかったサービスを実現しようとしているのです。
例えば、自動車や設備機器に組み込まれたセンサーがクラウドサービスに送ったデータを解析し、予防保守の必要性やタイミングを判断することで、故障で動かなくなる前に点検や修理を行えるようにします。これにより、ユーザーの満足度は高まり、さらに保守・点検のタイミングや、そこに関わる機材や部品、エンジニアの稼働を最適化し、サービスコストの削減が可能になるでしょう。
また、稼働状況をリアルタイムで確実に計測できることから、「モノ」を売らずに、タクシー料金のように使用量に応じて課金するといった「サービスとしてモノ」を提供するビジネスも可能になります。
自動車の場合、運転者が安全な運転をしているのか、乱暴な運転をしているのかを把握し、保険料率を変動させるといったサービスも考えられます。さらに、ネットワークを介してモノに組み込まれたソフトウェアを更新し、機能や性能、操作性を向上させることもできるようになります。
このようにIoTは、モノそのものではなく、「モノを含むサービス全体」が新たな価値を生み出そうとしているのです。
この2つのパラダイムシフトが、私たちの生活や社会活動、そしてビジネスを大きく変えていくことになるでしょう。
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.