第7回 SDS導入のきっかけと効果、一斉導入した欧州通信事業者の場合データで戦う企業のためのIT処方箋(2/2 ページ)

» 2016年05月17日 07時00分 公開
[森本雅之ITmedia]
前のページへ 1|2       

課題解決の方法

 課題に対する検討の結果として、迅速なシステム展開を可能にしつつコストを抑制する方法として、SDS方式を採用することに決定しました。決定に至った経緯は、それぞれの課題について以下の対策が取れることからです。

  • データのマイグレーション:既存投資環境を活用しつつ、汎用ハードウェアを利用した新しいプラットフォームや技術(例えばオールフラッシュストレージなど)を追加したり併用したりできる
  • BCPとしての懸念:異なるストレージハードウェアを利用していても、単一のSDS製品、アーキテクチャで全データセンターの運用を統一できる。加えて、ストレッチクラスターによる広域クラスタ構成を組むことができ、アプリケーションレベルで複数データセンターにまたがった高可用性環境も提供できる
  • ベンダーロックイン:ストレージ固有、個別のライセンスなどは不要になり、SDSの費用と汎用ストレージのコストだけを考慮することができる。結果として、各ハードウェアベンダーに対して価格交渉の主体性を維持できる
  • 多岐にわたるサービスに対するSLAの達成:個別のストレージ単位ではなく、全ストレージ空間にわたる統合されたデータサービスとして、性能や機能などのSLAを汎用的に提示、提供できる
  • 今後発生するさまざまな新事業に対応できる柔軟性を持つIT基盤:ストレージ管理基盤の統合による複雑さが低減できる。まだ、APIも含めて自動化、継続的な最適化が可能な構成を提供できる
図:導入前後でのアーキテクチャの変化

獲得した効果

 それでは、実際の効果はどうだったのか見てみましょう。

  • 異機種混在環境での既存設備投資の有効活用:追加ストレージハードウェア投資の延期を実現
  • 初回投資の抑制:サブスクリプションライセンスによるOPEX化、追加ストレージハードウェア投資の最小化
  • サービス提供範囲の拡大とリリース迅速化の両立:既存担当者でのシステム提供までの時間短縮
  • 管理能力の強化と自動化の実現:統合基盤確立は達成。APIを活用した運用基盤は別のSDC(Software Defined Compute)基盤などと連携して準備中

 以上がSunrise Communicationsの事例です。さすがに具体的なROIまでは開示されていませんが、IT部門のインフラとして専任10人だけでの運用となれば、国内企業なら準大手や中堅企業でもあてはまる規模の人数です。通信事業者という大企業の事例ではありますが、課題と目的は規模の違いこそあれ、参考になるかと思います。

 次回は、“あえて”SDSを一気に導入「しない」ことを選択した国内企業の事例を紹介します。

執筆者紹介・森本雅之

ファルコンストア・ジャパン株式会社 代表取締役社長。2005年入社。シニアストレージアーキテクトおよびテクニカル・ディレクターを経て2014年5月より現職。15年以上に渡って災害対策(DR)や事業継続計画(BCP)をテーマに、データ保護の観点からストレージを中心としたシステム設計や導入、サービス企画に携わる。現在はSoftware-Defined Storage技術によるシステム環境の近代化をテーマに活動中。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ