富士電機、工場に「予測分析型」フラッシュストレージを導入

富士電機は仮想化環境におけるストレージのパフォーマンスの課題解決と運用管理の効率化を図るため、三重工場に予測分析フラッシュストレージを導入した。

» 2016年07月12日 06時30分 公開
[ITmedia]

 伊藤忠テクノソリューションズグループのシーティーシー・エスピーは7月11日、富士電機の三重工場が、情報システム基盤向けに米Nimble Storageのストレージ製品を活用した仮想化共有ストレージシステムを構築したと発表した。このシステムは2016年2月から稼働している。

 富士電機三重工場は、国内トップシェアの同社の自動販売機、オープンショーケース、可搬型保冷庫などの中核的な生産拠点となる。同工場では、2009年から利用してきたサブストレージとメインストレージにおけるI/O性能やスループットに課題を抱えていた。当時は既にサーバの仮想化率も91%に達していたという。サブストレージは、開発・検証用の仮想マシンやバックアップの一時領域などで活用してきたが、2テラバイト以上の容量を持つ仮想マシンが増加してきたことにより性能差が発生。特に、VMware vSphere Storage vMotionによる仮想マシンの領域再配置では完了までに大幅な時間がかかり、その間メイン・サブ双方のリソースが消費されてしまうなど、運用の柔軟性が損なわれていた。今回はストレージシステムの更改を機にNimble Storageを導入した。

仮想化共有ストレージシステムの概要図(出典:CTC SP)

 Nimble Storageは、プレディクティブ(予測分析)型のフラッシュストレージソリューションが特徴という。フラッシュはパフォーマンスが高く、予測分析機能を組み合わせたプラットフォームによって、複雑なITインフラでもデータの高速処理を阻害する要因を予測して回避できるとしている。以前より少ないデバイス数で、高いパフォーマンスを得られ、ストレージ自身や仮想マシンの状態を可視化してシステム全体を効率的に管理できるという。

 また、独自開発の「CASL」(Cache Accelerated Sequential Layout)と呼ばれるファイルシステムを搭載し、HDDやSSDなどのデバイスではなく、CPUを使ってパフォーマンスを向上させている。従来型のブロックストレージに比べて書き込み処理が1000分の1程度nに削減されるとし、ランダムI/OではブロックをSSDにコピーし、リードキャッシュとして利用することでもI/Oパフォーマンスを向上させている。

 富士電機三重工場は、従来の仮想化の共有ストレージシステム3台をNimble Storageに集約した。パフォーマンス向上のほか、データの圧縮、設置容積や消費電力の削減、運用コストの削減などを図った。導入に際しては、2014年12月〜2015年2月にテスト機で実証を行い、高いキャッシュヒット率やI/Oパフォーマンス値がオールフラッシュ製品に迫る値だったことを評価した。「1カ月間生産管理システム」で行った検証では、バッチ処理時間が24%短縮したことも確認された。導入後は仮想基盤用のストレージとして、140以上の基幹系仮想サーバ群、80以上の仮想デスクトップ端末が接続される環境で利用されている。

 仮想基盤におけるパフォーマンス低下の主たる要因は、ストレージ性能の場合が多く、昨今ではオールフラッシュ製品の導入による課題解決が注目されている。しかし、オールフラッシュ製品と同等性能を有する製品も登場し、富士電機三重工場のような効果も確認されているなど、今後の仮想基盤におけるストレージ選定では、選択肢の広がりが期待される。

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