学生向け仮想デスクトップの改善にオールフラッシュストレージ採用、立教大学が決断したワケ

約2万人が通う立教大学では学生に仮想デスクトップ環境を提供している。利用増で性能低下に悩み、オールフラッシュのディスクアレイシステムを導入した。高価なソリューションだが、思い切って導入した背景は何か。

» 2015年02月26日 10時50分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
創立140周年の立教大学

 創立140周年を迎え、約2万人が通う立教大学では学生の学びを支援するために仮想デスクトップ環境を提供している。学生たちがどの端末からでも気軽にアクセスできるようにという目的だが、今回この仮想デスクトップを支える土台にオールフラッシュのディスクアレイシステムを導入した。フラッシュベースのストレージは、既存のHDDベースと比較すると新しく高価なソリューションといわれるが、思い切って導入した背景を聞いた。

 立教大学は2013年3月に仮想デスクトップ環境を導入した。インターネットを使った調べ物やレポートの作成と、学生がコンピュータを必要とする場面が増えている。大学内に端末を設置し、ログインするだけで気軽に環境にアクセスでき、さらにはセキュリティや管理も考えて、仮想デスクトップを選択した。そのような流れで、まず450台の端末を用意し、図書館などに設置した。

 その手軽さが学生に受け入れられ、すぐに授業の合間や休み時間などに利用が集中するようになった。仮想デスクトップではユーザーがログアウトすると、データを消去するリフレッシュ作業が行われる。ところが、ログオンとログアウトが増えるに従ってリフレッシュ処理も増えていく。当然ながら、パフォーマンスは低下し、デスクトップの起動に2分以上待たなければならない状況が慢性化するようになった。アクセスできないユーザーが出てくるという事態もあり、改善に乗り出した。

 立教大学メディアセンターの小川龍秀氏によると、ポイントは2つあった。パフォーマンス低下の原因となっているディスクI/Oへの負荷に対する対策、そして、仮想デスクトップ環境の拡充だ。新規に150台を追加することにも、「ちょうどPCの更新が必要となっていたこともあり、既存分を含めて仮想基盤全体を見直せないかと思った」(小川氏)と振り返る。

 ソリューション導入にあたっては、HDDとのハイブリッド型も検討したが、既存環境のI/Oの改善をするならオールフラッシュがよいのではないかという結論に達したのだという。そこで、ピュア・ストレージのオールフラッシュアレイ「FA-405」を導入する。合計600台の仮想デスクトップで必要なIOPSは6万、システム導入を手掛けたユニアデックスの事前検証ではこれを上回る10万IOPSもカバーできることが確認されたという。

立教大学が導入した「FA-405」(ピュア・ストレージ資料より)

 新基盤の構築は2014年に7月に開始し、夏休みが終わる頃の9月中旬に稼働を開始した。現在は稼働から半年足らずだが、立教大学が解決したかったストレージI/0の改善は実現しているようだ。

 仮想デスクトップの起動時間は従来の半分となる1分から1分15秒程度に短縮された。このような性能改善は、運用面にも及ぶ。リフレッシュ処理時間が大幅に短縮されたことで、それまで夜間にしか行えなかったバッチ処理が都度行えるようになったのだ。さらには、重複排除と圧縮技術によりデータの“ダイエット”も実現。データ容量はこれまでの約10分の1となり、ストレージを収納するラックは14Uから4Uと3分の1に削減された。

 これらの成果を挙げた小川氏は、「性能は求めればきりがないが」と苦笑しながらも、「改善できたという点で満足している」と述べる。

 今後の展開について小川氏は、「いつでも、どこでも、どんなPCでも、同じ仮想デスクトップにアクセスできる環境を提供していきたい」と語る。現在キャンパス内に設置されている端末に制限している仮想デスクトップの利用拡大を視野に入れており、学生が自宅のPCやタブレットでもアクセスできるようにしていくことなどを考えているという。

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