クラウド導入で負担が減ったフジテックの情シスがやっている仕事(2/3 ページ)

» 2016年07月20日 13時00分 公開
[御手洗大祐ITmedia]

―― クラウド導入の効果をどのように見ていますか?

友岡氏 フジテックも、一気に全てをクラウド化したわけではなく、まずは一部のサーバをAWSに移行して、データセンターの面積をほぼ半分にしました。徐々にデータセンターを縮小して、コストを下げていく感じですね。今、お金を払っているデータセンターのコストが聖域のように扱われる文化はおかしいと思いますね。

 今まで何の疑問も持たずに払ってきた費用が、少し見直すだけで、安く信頼性の高いものにできる。しかも“安かろう悪かろう”じゃなく、安くて早くて、しかもうまいわけです。当社の場合、サーバは一度購入すると5年間は同じものを使うため、これまではこの期間中には全く性能が進化しなかったのですが、AWSに移行してからは常に新しく、ハイスペックなものを使えるようになりました。

IT部門が“業務現場の言葉”で語れるようになるために

―― クラウドの導入で、情報システム部門の業務はどのように変わりましたか?

友岡氏 Google Apps を例にとると、開発不要でサービスを使えるところが大きいですね。これまではサービスを作るところにエネルギーを使っていましたが、今は「いかにうまく現場に役立つ形に仕立てて現場に定着させるか」を検討する部分に人員を配分できるようになりました。

―― 具体的にどれぐらいの比率で業務分担が変わったのでしょうか?

友岡氏 これまでは6割が基盤寄りだったのですが、今は1割が基盤に、9割がビジネスのサポートに変わりました。これまで情報システム部門の役割は、とにかくサービスを作ることでした。それが今では、最初に“現場の困りごとを理解すること”になったんですね。

 困りごとの吸い上げは、現場に行って聞くのではなく、現場で観察するよう指示しています。なぜかというと、現場に困りごとを聞くと、「情報システム部門だったらこれを解決してくれるに違いない」というバイアスがかかって、決まりきったことしかお願いされなくなるんです。最近では、いろいろな便利なツールが登場しており、これまで想像も付かなかったような形で困りごとを解決できるようになっているんですね。

 こうした背景から、まずは現場に行って、そこにいる人たちの仕事ぶりを観察し、引っ掛かりを感じたり大変そうに見えるところを見つけるようにしています。その時に解決策が分からなくても、世の中にあるさまざまなソリューションを見ているうちに、このツールがマッチするんじゃないか? と分かってくるんです。それを現場で困っている人に見せたり、プロトタイプにして持っていくよう指示しています。

 もちろん現場に持ち込んだ提案は、当たる時もあればダメな時もありますが、その中で、「これ、すごくいい!」と現場の人が絶賛するケースもよくあるんです。例えば、エレベーターのメンテナンス時に、これまでは電話で現場の状況を事細かに伝えていたのが、今ではビデオチャットで伝えたり、テキストチャットと写真で伝えたりできるようになったのもその一例です。

 最近、「情報システム担当者は手を動かすべきなのか、あるいは上流の手配師であるべきか」といった議論がありますが、私たちは、「手を動かす前に足を動かせ、現場に行って汗をかいて仕事を観察しよう」と言っています。

 現場のスタッフがどんな仕事をしているかをずっと観察し、その中から改善できる課題を発見してソリューションを探す。ソリューションを現場にあった形にデザインして、現場に持ち込む――ということを繰り返しています。

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