銀行を中心に、ブロックチェーンの実証テストや本格導入が進んでいる。ヨーロッパで行われているテストや導入例をまとめて紹介する。
スコットランドの銀行Royal Bank of Scotland(RBS)の研究者たちは、ブロックチェーンは既存の「Faster Payments」(英国のリアルタイム決済サービス)と同様の機能を実現できること、そして金融業界標準となり得る新手形交換システムをサポートする可能性を実証したと主張している。
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インターネットで公開された技術論文の中で、RBSのイノベーションエンジニアリングチームは、Ethereumの分散台帳に基づいた手形交換および決済のメカニズムを構築し、そのコードネームを「Emerald」と命名したことを発表した。
このプロジェクトは、決済を規定する中央機関が存在しない国際的な手形交換システムにブロックチェーンを利用できるかどうかを見極めることを目的としていた。この目的を達成するため、ブロックチェーンの分散台帳を使って、英国内で利用されているFaster Paymentsなどの手形交換システムの複製を試みた。
その結果研究者たちは、Ethereumは「決済額のボリュームまでスケールアップ可能で、国内の決済システムとも一致している」と結論付けた。
RBSの技術論文には、次のような記述がある。「テスト結果によると、シミュレーションを行った6つの銀行で、1秒当たりのスループットは決済100回となっている。1回の決済の平均処理時間は3秒、最大処理時間は8秒だった。これは、全英規模の国内決済システムとして適切なレベルだ」
多数の銀行が今、ブロックチェーンの調査に乗り出している。その狙いは、決済プロセスのインフラコストが非常に高額なため、それを削減する解決策となり得るかどうかの見極めだ。ブロックチェーンは、分散台帳と高度な暗号化を利用して全トランザクションの出どころを保証するピアツーピアのテクノロジーだ。銀行に対して、その出どころの情報は現在も提供されている。その機能を担っているのは、煩雑で官僚主義的なバックオフィスシステムだ。
RBSの技術論文は、ソフトウェアプロバイダー企業のRippleが実施したブロックチェーンに関する調査結果を引用している。それによると、国境を越えた手形交換と決済処理に分散台帳を利用すると、金融業界が現在負担している1500億ドルの経費を500億〜600億ドルに削減できると見積もっている。
論文には次のような記述もある。「現在のところ、国境を越えた手形交換と決済処理は非効率で透明性も高くない。分散台帳ソリューション(ブロックチェーン)が国際的な手形交換と決済処理に適用された場合、ブロックチェーンは可視性の向上、決済のリスクの最小化、コストの低減、トランザクション処理速度の向上を実現させると期待されている」
このテストでは、「Google Cloud Platform」(GCP)が使用された。また、GFT Technologiesとの協業で、Googleのコンテナ管理ソフトウェア「Kubernetes」を利用した。RBSはこのプロジェクトを将来はオープンソース化してリリースすることを希望している。
ブロックチェーンのテストについては、RBSは以前からパイオニアの立場にあった。2015年の時点で、このテクノロジーを応用した決済関連製品の開発計画があると本誌Computer Weeklyに語っていた。
他方、(RBSと競合する)Barclays Bankも最近、ブロックチェーンのテストに取り組んでおり、貿易金融の分野で大型契約にこぎつけた。さらにスペインのSantander銀行はブロックチェーンで銀行アプリの基盤を刷新した。これによって、顧客は1日24時間いつでも国際間の決済を実行することができるようになった。
英国政府もブロックチェーンを公共機関に導入する調査を進めている最中だ。例えば労働年金省は、分散台帳テクノロジーのテストとして、給付金の請求者がモバイルアプリで支給状況を追跡できる仕組みを導入している。
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