まずは、課題解決のためのデータ、そして課題発見や仮説構築のためのデータは、たとえ同じものを扱っていても、目的が異なることを理解してもらう必要があります。目的が違えば、データの使い方が変わります。そのためにDMPが必要になってくるのです。
また、組織に「未知の未知」を受け入れる素養があるかどうかも重要なポイントです。知らないことは“存在しないこと”と同じ。例えば「なぜ、ユーザーは私たちの意図する行動を取らないのか?」という課題の発見とそれに対する仮説立てを、そもそも自社が取り組むべき課題として受け入れてもらえるかも大切でしょう。
これらの“乗り越えるべき幾つかの壁”をすっ飛ばして、いきなり「DMPを導入しましょう!」と声を上げるのは、時期尚早と言わざるを得ません。これでは、付き合った初日に婚姻届を出そうと言っているのと同然です。成功するかどうかは別として、少なくとも相性くらいは確認しないと、話はそう簡単にまとまりません。
とはいえ、「DMP導入」の声を上げることは大切です。声を上げたのに、誰も賛同してくれなかったから諦めるというのは早計だと思います。
まずはDMPの効果を理解してくれる仲間を見つけましょう。データドリブンな感覚を持っている人や組織は絶対にあるはず。彼らの賛同を得て、巻き込むのがスタートです。そして仲間となるのは、広告関連の人だけとは限りません。
そもそも、DMPの活用方法は広告だけなのでしょうか? 自社で保有する顧客や潜在顧客の行動を一元管理するDMPは、製品企画や開発、営業活動にも使えるはずです。現在はDMP=マーケティングという認識が定着していますが、データに基づき「未知の未知」から課題を発見する役割であれば、SFA(営業活動支援)やCRM(顧客関係管理)なども、広義の意味でDMPといえるでしょう。
仮にマーケティング戦略にはまだ早かったとしても、営業戦略に役立てるなら機が熟しているかもしれません。もしかしたら、経営戦略として“待ったなし”の状況かもしれません。経営陣からのトップダウンでDMPの導入プロジェクトが始まるケースがありますが、それが良い例です。
もし、SFAとしてのDMPの企画が立ち上がって、あなたに進行の白羽の矢が立ったとき、「マーケティングじゃないのか」とテンションは下がってしまいますか?
だとすれば、あなたはDMPを使った広告運用がしたいのでしょうか、それともデータドリブンな意思決定と組織運営をしたいのでしょうか。DMP導入の本質はどこにあるのか、それを忘れてしまうと効果が上がらなくなってしまいます。
次回は「DMPを導入しようにも、経営陣が“売上にどう貢献するか”ばかり聞いてきて、なかなか話が前に進まない」という事例をご紹介します。
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