「すかいらーく」がデータ分析基盤を刷新したワケ

成熟しつつある外食産業でどう売り上げを伸ばすか。各社、プレミアム路線や新業態への進出などさまざまな施策を展開しているが、すかいらーくはデータ分析でマーケティングの効果を向上させようとしている。そんな同社が導入したデータ分析基盤とは。

» 2015年02月26日 12時00分 公開
[池田憲弘,ITmedia]
photo 外食産業の売上高と店舗数の伸び率推移(出典:日本フードサービス協会)

 2014年4月の消費増税後、外食産業の売上が鈍っている。日本フードサービス協会の調査によると、アベノミクスなどに支えられ、2012年から伸びていた業界全体の売上高が2014年6月以降、前年を下回る傾向にある。

 外食産業の市場規模は23.9兆円(2013年、日本フードサービス協会調べ)を誇る日本最大の市場だが、産業全体が成熟しつつあるのも事実だ。さらに近年では、コンビニエンスストアが飲食メニューを充実させたことで、外食産業を脅かしている側面もあるという。

 厳しい状況下で、新たな商機を見出すにはどうすればいいか――各社は低価格路線からの切り替えや新業態店の展開など、さまざまな施策を打っている。そのような中、データ活用でマーケティング施策の効果を向上させようと試みる企業もある。

スマホアプリの展開でデータ量が激増

 ファミリーレストラン「ガスト」を展開するすかいらーくは、各種キャンペーンやクーポン施策を実際する際に、データ分析に基づいた意志決定を重視してきたという。「2011年に米投資ファンド『ベインキャピタル』に買収されて以降、ROI(投資対効果)を一層重視するようになりました。定量的なデータに基づいた施策が求められるようになったのです」(同社マーケティング本部 インサイト戦略グループ 瀬良豊さん)

 同社はその後、マーケティング施策をマス中心から、個人をターゲットにする“One to One”戦略へとシフト。ビッグデータ分析のために、アマゾンのデータウェアハウスサービス「Redshift」を導入し、POSデータなどの情報を格納、BIツールで分析を行ってきた。

 しかし、スマートフォン用アプリ「ガストアプリ」などを展開するにつれて、取り扱うデータが激増。分析に長い時間がかかるようになってしまったことから、同社は2014年初頭から新たなビッグデータ分析ソフトウェアを探し始めた。「スマートフォン用アプリを使えば、データを集めるだけではなく、こちらからクーポンなどを配信するプッシュ型の施策が行えます。そのため、データ分析の価値が高まってきたという背景がありました」(瀬良さん)

photo ガストの公式モバイルアプリ「ガストアプリ」

自動化で分析スピードが向上、DMPの構築を目指す

 分析基盤を選ぶ際に重視したのは、高い精度を保ったまま高速で分析を行えることだ。同社の顧客データは100億レコードを超えており、日々行うキャンペーンやクーポンなどの施策に対応するため、分析時間を短くすることが大きな課題だった。

 「一般的な既存の統計解析ツールは、さまざまなモデリングを試行錯誤するケースには向きますが、変数が決まっている状況で早く分析を回すとなると、また別のソフトが必要でした」(瀬良さん)

 新たなソフトウェアが決まったのは2014年の12月。担当者がブレインパッドのセミナーに参加した際に、SAPジャパンの「SAP InfiniteInsight」を知ったことがきっかけという。分析担当者のスキルレベルに依存せずに、一定の精度が担保できることや、分析の自動化に強い点も、導入の際に大きなポイントとなった。

 「導入において、ブレインパッドがしっかりとサポートしてくれるところも評価しています。ビッグデータ分析の専門家をそろえていて、アドバイスを求めれば適宜返ってくるという体制は魅力的ですね」(瀬良さん)

photo 「SAP InfiniteInsight」は分析の自動化により、工数を減らせるという特長がある(出典:ブレインパッド)

 現在はテスト運用も終わり、さまざまな分析を試しているという。分析精度を高めるためにデータの整備を進めるのが目下の課題だ。今後は実用的なDMP(Data Management Platform)の構築を目指すそうだ。

 「さまざまなマーケティング施策を通じて、顧客のロイヤリティが高まるシナリオを発見することが大きな目標です。データに基づいた施策はROIが大きく変わるのは、アプリを通じて実感しています。今後は、統計やマーケティングの手法を使って、システム的に売り上げを伸ばせるように一歩一歩進めていければと思っています」(瀬良さん)

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