ドラえもんや鉄腕アトムのような、人間と自然に会話ができる人工知能は本当に生まれるのか――。人間らしい自然なコミュニケーションを実現するために必要な“要件”はいろいろとあるが、人工知能にそれを適用するには、さまざまな壁があるのだという。
ドラえもんや鉄腕アトムのような、人間と自然に会話ができる人工知能は本当に生まれるのか――。NTTで人工知能による雑談対話を研究している東中竜一郎さんに聞く本インタビュー。本記事(中編)では、人間らしい自然なコミュニケーションを実現するために必要な“要件”について聞いていく。
NTTで人工知能による雑談対話を研究している(前回の記事を参照)東中竜一郎さんは、1年ほど前に、芸能人のマツコ・デラックスさんに似せたロボット「マツコロイド」に雑談機能を組み込み、テレビ番組でマツコさんと雑談をさせたことがあるが、うまくいかなかったという。独身のマツコさんに対して、マツコロイドが“夫婦”に関する話題を振り続けてしまい、気まずい雰囲気が流れてしまったのだ(番組的には笑いが起きて盛り上がったが)。
「マツコロイドについても、ブログなどのデータから会話の話題を選んでいるわけですが、夫婦の話題に固執してしまったのは、マツコさんの心を読み切れていないのが原因ですね。マツコさん自身は、この話題から離れたいという気持ちを示していたのですが、人工知能は、“今、話題を変えるべきだ”ということを理解できない。むしろ夫婦の話題が出てきたので、そのまま続けた方がいいという解釈をしてしまったのです」(東中さん)
相手が発した言葉“そのもの”を分析してしまうと、相手の気持ちを読み切れない。特に遠回しな表現が多い日本語では、それが大きな問題になってしまう。こうした背景から東中さんは、「この話題から離れたいと思っているかどうか」を認識する機能についても研究している。言葉の“言い方”で数値化できる部分が大きく、精度は高まってきているが、他のシステムとの連携がまだできていないという。
そして、仮に現在の話題から離れたいことが分かったとしても、別の話題に移るのも簡単なことではない。例えば「うどんがイヤ」だと分かったとして、そばの話題ならいいのか、めん系の話題はダメなのか、どこに飛べばよいのか、選択肢は無数にある。そして、あまりに関係のない話題になると、相手が混乱して会話が途切れる可能性もあるのだ。
「普段の雑談から、相手の好き嫌いの情報などを事前に把握しておけば、話題を変えたいときにうまくテーマを選べる可能性は高まります。あと必要なのは、テキスト以外の情報ですね。このシステムでは、音声認識した結果のテキストだけがロボットに入力され、それを音声合成で出力しているだけなので、マツコさんの表情とかしぐさを全然考慮してないわけです。
ちょっと『うっ』と思ったり、『変なこと言ったな』というような顔をしたときも、システム側はそれが分からない。人間であれば、顔の表情とか動きとか目線とか、そういう情報から『ちょっと話題を変えた方がいいか』と判断しますよね。そういった部分を今後やらなくちゃいけないのですが、既存の対話システムと融合するのは簡単ではないと考えています」(東中さん)
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