電気回路の課題を解決できる? フォトニクスの伝送技術「ムーアの法則」を超える新世代コンピューティングの鼓動(2/2 ページ)

» 2016年12月16日 08時00分 公開
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光にするもう1つのメリット

 最後に、上記の問題解消以外におけるメリットが、伝送路を変えずに、帯域を容易に増やせる点です。その方法は「WDM」(Wavelength Division Multiplexing)といい、日本語では「光波長多重通信」や「波長分割多重通信」と呼ばれます。

 光はその性質上、異なる波長を混ぜても後で分離できます。これを利用して、複数の波長それぞれに別の信号を乗せて合波器で一本の光にして伝送し、受信側で分波して取り出します。波長が2種類なら単純にデータ量は2倍、3つなら3倍にできます。既に4倍までは成功しており、理論上64倍までは増やせるようです。

WDMの方式例。VCSELやMicroringなど、さまざまな方式が研究開発されている

 このように光による伝送は、消費エネルギーを削減しながら、同時に信号劣化と、これまたエネルギーの問題で存在した距離の制限を大幅に緩和でき、かつ帯域も大きく増やせることがお分かりいただけたかと思います。これによって前回説明した、1つの階層にしたメモリ空間をさらに広くできるのです。


 さて、ここまで筆者の所属する会社で開発を進めている次世代コンピュータの要素技術術を解説してきました。次回はその最新動向を紹介したいと思います。

三宅祐典(みやけ ゆうすけ)

日本ヒューレット・パッカード株式会社の「The Machineエバンジェリスト」。Hewlett Packard Enterprise(HPE)の中央研究所「Hewlett Packard Labs」が認定するエバンジェリストであるとともに、普段はミッションクリティカルなサーバ製品を担当するプリセールスSEとして導入提案や技術支援を行う。ベンチマークセンターのエンジニアとしてHP-UXとOracleデータベースの拡販支援やサイジングを担当後、プリセールスエンジニアとして主に流通業のお客様やパートナー様の提案支援を経験し、現在に至る。

趣味はスキー、ダイビングといった道具でカバーできるスポーツ。三宅氏のブログはこちら。


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