IoTフル活用の未来に立ちはだかるコンピュータの課題とは何か「ムーアの法則」を超える新世代コンピューティングの鼓動(1/2 ページ)

前回はIoT時代にデータを全て利用できれば、どのように便利な生活が実現されるかを取り上げました。ですが、すぐにこんな時代になるとは言い切れません。今回はITの側面における大きな問題点に触れてみたいと思います。

» 2016年11月04日 08時00分 公開

 IoTによる便利な生活を実現する上では、膨大なデータからどれだけ必要な情報をリアルタイムに、的確に取り出せるかがポイントだといえます。前回は、航空機や自動車の例にそのことについて取り上げました。しかし、ここで一度考えてみましょう。いま、読者の皆さんは自身の会社、あるいは関わるところでデータから瞬時に必要な情報が取り出せていますか。それに、新たに膨大なデータが付け加わった場合はどうでしょうか。ビジネスとして意味のある速度で必要な情報をまとめることはできるでしょうか。

 前回の例に限らず、データの量は多いほど、より的確に情報を得られます。もちろん必要のない情報もありますが、それら全てから意味のある情報(洞察とも言いますが)を得るには、新しいデータを取り込み、既存の情報と統合して目指す結果に加工しなければなりません。

 そこで最初の疑問が浮かびます。今のデータ量で本来必要な時間内にデータが取り出せていないなら、前途は多難でしょう。もっと大きなデータを扱うには、さらに記憶領域と処理能力が必要になります。記憶領域はおそらく容量を増やせばいいでしょう。記憶領域に対する処理速度も必要になりますが、この点で幸いにもSSDの大容量化が進んでおり、解決できそうに思えます。

 一方で計算処理の能力はどうでしょうか。処理速度を稼ぐにはCPUが今より速くなるか、CPUの数を増やすかのどちらかになります。

CPUの変遷とデータ量の増加

 しかし、この連載の第1回で触れたように、CPUの処理能力はまもなく上がらない状況になると予想されています。このグラフのように、プロセスルールが小さくなることによってトランジスタ数は増加してきましたが、他方でシングルスレッドあたりのパフォーマンスは上っていません。コア数の増加でCPUの能力を稼ぎ、微細化によって消費電力を抑えている状態になっています。この先、プロセスルールは物理学上の限界との挑戦になります。それはつまり、この課題を解決する手法は、CPUの数を増やす方向になっていくと予想されます。

 現在でも大量のデータを処理する基盤としては、サーバを並列にクラスタ化して処理する方式が着目されています。エンタープライズ領域で使用され始めているものには、Hadoopがありますし、より処理の高速化のためインメモリのクラスタ形式をとるApache Sparkなどがあります。

 しかしCPUの数を増やすと、ある問題が発生します。それは消費電力の問題です。

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