Webやスマートフォンが普及した現在では、体調不良を感じるとインターネットで検索するケースも多いだろう。しかし、薬というのはWeb上では売れにくい商材だ。郡司氏はココカラファインのEC事業責任者として薬のWeb販売事業も担当しているが、「アパレル業界のように、全体売り上げの10%以上をWebで販売するようにはならない」というのが、現時点での結論だ。
「Amazon Prime Nowのように、わずか2時間足らずで届けてくれるような事業者であっても、消費者の『頭が痛いので、今すぐ欲しい』というニーズには間に合いません。ECサイトは対面では買いにくい商品や、持ち運びに苦労する重い(大きい)商品との相性はいいですが、すぐに効果を望んでいる薬や、自分の肌で試したいような化粧品はなかなか売れません。
とはいえ、消費者は体の不調時にWebなどで検索して情報を得るので、弊社もWebでの正しい情報提供には注力しています。最近のキュレーションメディア騒動で、信頼できる健康情報を提供したいという思いがより強くなりました。例えば、胃腸の市販薬は約900種類もありまして、店頭にも数十種類が並んでいます。パッケージには、ざっくりと「胃痛・胃もたれに効く」と書いてありますが、症状や状況によって適した成分の薬を選ぶことは、一般の方には非常に難しい。
そこで、ココカラファインの情報サイト「ココカラクラブ」の『あなたのお悩みは?』では、特徴のある成分の薬を選んだときに『差し込むような急な痛みによく効きます。胃痛だけでなく、腹痛にも使えます』といった薬剤師のワンポイントアドバイスを添えて、ご自身で選びやすくしています。これは単にECで売るというだけのことではなく、店頭で選ぶ際にも役立つと考えています。
将来は店頭にタブレットを用意し、お客さまが店員と話しながら症状に合わせた薬を提供できるようにしたいですね。近くにあるから、便利だから、という理由で利用されるドラッグストアに、もう一度来てもらったり、お気に入りのドラッグストアとして認知してもらったりするには、期待以上の接客をすることが有効だと考えています」(郡司氏)
今後は、Webの施策と店頭をより一層融合させるのが課題だ。これまではEC事業の規模に対して費用対効果が見合わないこともあり、「各Webページのアクセスログデータなど、蓄積しているだけで分析はあまりできていなかったデータがたくさんあった」とのことだが、スマホアプリの提供、アプリと同一IDでのWebサイト利用者の会員化、店舗での会員カードとの連携などを通じて顧客との接点を増やし、顧客一人一人のニーズを分析するフェーズに入っている、と郡司氏は話す。
直近ではプライベートDMPを構築し、Amazon RedshiftやTableauを使って「ユーザーがスマホアプリをどのように利用しているか」「サイトの記事や商品検索による興味と購買結果」の分析を進める予定だという。
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