ユーザーテストを軽視しすぎる日本企業の問題点失敗しない「外資系」パッケージソフトとの付き合い方(3/3 ページ)

» 2017年02月20日 08時00分 公開
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ユーザー企業とベンダー、相互の甘えが問題を引き起こす

 「納品後にもシステムを直してもらえる」「何かあったら作った側の責任」――。どちらの話も、その根底には、長年のSIで培われてきたユーザー企業とベンダー間相互の甘えの構造があるように感じます。

 この連載で述べた通り、パッケージソフトウェアを提供するのはソフトウェア企業ですが、それを選択するのはユーザーの責任です。これはSIでも言えることですが、システムの受け入れには必ず“検収”があり、それが完了すれば、ユーザー企業は、「そのシステムが自社の要求にかなったものだ」と確認したことを意味します。

 何より大事なのは、そのシステムをリリースした後、当初意図した通りにユーザーに価値をもたらすことです。それが念頭にあるならUATも、当事者であるユーザー側で徹底して行うはずです。

 そのような考えが一般的な企業や国では、テストを支援するためのテスティングソフトウェアやサービスの需要も高いのです。それらの多くは日本でも活用できるものですが、日本ではあまり浸透していないのが現状です。「ユーザー側で積極的にテストする」という考えが浸透すれば、日本でも、その市場が拡大する余地が十分にあるでしょう。

photo UAT不足で失敗しないために

 世の中の流れが、イチから自前で作る従来型のSIから、既製品をうまく組み合わせて使いこなすパッケージソフトウェアの利用に変われば変わるほど、ユーザー企業自身がしっかりテストし、それを受け入れる考えが重要になってくると思います。

 以上、3回にわたって、プロジェクトの終盤であるソフトウェアの利用開始のフェーズに焦点を当てて例を紹介しました。次回からは、商用環境へのリリースも乗り切り、長い道のりである「運用」で起こる失敗例をご紹介します。お楽しみに。

著者紹介:吉丸新一郎

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 日本ヒューレット・パッカード株式会社 プロフェッショナルサービス コンサルタント / シニアアーキテクト。自社のエンタープライズ向けソフトウェア、特にハイブリッドクラウド管理、データセンター運用自動化製品を専門とした導入コンサルティングを担当。

 製造業システム子会社でのデータセンター事業企画・運用、ベンチャー企業での新規事業開発および運用を経て、ソフトウェア利用者の立場をサプライヤーの立場に変え現業に従事、現在に至る。

 趣味は音楽鑑賞(ジャズやクラシック)や歌舞伎やオペラの観劇など。旅行が好きで、食べ歩きが得意ジャンル。

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