データ分析を担当する二瓶さんは、今のチームができたことで、とても仕事がしやすくなったという。「ひとり分析担当」として仕事をしていた時期は、あるゲームタイトルの企画担当者から「データ分析を手伝って欲しい」という依頼があると、分析するデータを手に入れるため、そのチームのエンジニアに対して個別に折衝していた。
「データをもらうにしてもチームごとにルールがあり、データベースの型やカラム名の付け方などの“作法”も違います。これまではそれらを覚える必要があったのですが、横断型の組織ができてから、インフラエンジニアと一緒に仕事するようになって、とても助けられています。
新しくサーバを立ち上げるときは『あらかじめ分析のことを考えた構成にしましょう』という話ができるし、運用中のタイトルについても、『これは将来的にどうあるべきか』『こういう運用に向けて進めるといいね』といった相談をしながら、各タイトルの環境をそろえようと動いてくれるので、私の業務効率もどんどん上がっています」(二瓶さん)
最初はエンジニアと一緒に仕事をすることに「緊張した」という二瓶さんだが、今はその利点を大いに感じているという。
一方の高野さんは、このチームの必要性を唱えた“言い出しっぺ”として、チーム長を任命されたそうだ。とはいえ、高野さんはカプコンに入社してから1年弱とまだ日が浅い。それまではコンサルタントとして、カプコンの開発組織体制についてアドバイスする仕事をしていた。
「コンサルタントとして『こういうところが課題ですよね』なんて言っていたら、自分がやることになっていた」と笑う高野さん。なぜ、開発部門の横断的な組織が必要だと感じたのか、それは彼が全社を俯瞰して見ることができる立場にいたことが大きいようだ。
「言ってしまえば、カプコンは“プロダクトアウト”な会社です。自分たちが面白いと思うものをとにかく追求して、でき上がったら、後はみんなが遊んでくれる……とでもいうくらい、職人気質な、純度が高いクリエイターの集団と言えます。そこがコアなファンを引きつける要因ですし、カプコンの強みなのですが、『それだけでは、いつか行き詰まるのではないか』という個人的な危機感がありました」(高野さん)
この危機感の背景には、売り切り型のソフトではなく、長期間の運用が必要になるオンラインゲームなどのタイトルが増え、ビジネスモデルやITインフラに求められる要件が変化しているという状況がある。
「リリースしたらプロジェクトを閉じておしまい、という作り方をしている開発者向けのインフラと、リリースしてからが勝負という世界でがんばっている部署の人向けのインフラは全く違うものでなくてはならないはずです。今は特に、後者を育てていく組織が必要だと考えています」(高野さん)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.