パナソニックに復帰のMS樋口会長、古巣で待つ新事業とはMicrosoft Focus(2/2 ページ)

» 2017年03月04日 10時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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古巣で待っているのはIoT時代のB2Bソリューション事業

 では、樋口氏が担当するコネクティッドソリューションズとはどんな会社なのだろうか。

 パナソニックは、創業100周年を迎える2018年度に売上高8兆8000億円を目指している。その内訳は、家電が2兆3000億円、住宅が1兆6000億円、車載が2兆円、そしてB2Bが2兆9000億円。このうちのB2B(企業間取引)の領域を中心に事業を展開しているのが、コネクティッドソリューションズである。「コネクティッドソリューション」という名称には、顧客とつながる顧客密着型活動の徹底と、コア商材をIoT技術でつなげ、IoTを軸としたソリューション会社に進化する意味を込めたという。

 現時点では、航空機向けエンターテインメントシステムを担当するアビオニクス事業のほか、Let's noteやTOUGHPAD、POSを担当するITプロダクツ事業部、監視カメラなどのセキュリティシステム事業部など、9つの事業部とカンパニーがある。

 そして樋口氏が松下電器入社後、最初に配属された溶接機事業が含まれるプロセスオートメーション事業部は、4月1日付でオートモーティブ&インダストリアルシステムから、コネクティッドソリューションズに移管。このタイミングでの事業移管とは、まさに樋口氏と溶接機事業は切っても切れない関係のようだ。そして、Let's noteの事業を樋口氏が担当するというのも、ある種興味深い。実は樋口氏は日本マイクロソフト時代、Surfaceが発売される前は自らのPCとしてLet's noteを使っていた。

 なお、コネクティッドソリューションズのビジュアルシステム事業部には、3月31日まではデジカメのLumixが含まれるが、4月1日からアプライアンスに移管されるため、樋口氏はLumixの事業は担当はしない。

Photo コネクティッドソリューションズの注力分野

 コネクティッドソリューションズの中で成長領域に位置付けられるのは、エンターテインメント事業である。現在、2500億円の事業規模を、2018年度には3000億円の事業規模にまで拡大する計画であり、同カンパニーの成長を担う。

 新たに、メディアエンターテインメント事業部を設置し、「スタジアム」「テーマパーク」「IR(統合型リゾート)、MICE(会議、研修旅行、国際会議、展示会・イベント)」「メディア」の4つの領域で展開。サイネージや高輝度プロジェクターなどを活用し、開発・製造・販売の一貫体制で映像、音、光を組み合わせた「空間総合プロデューサー」を目指すというのが基本姿勢だ。

 これまでにパナソニックが手掛けてきたスタジアムソリューションとして代表的なのは、リオ五輪での成果だ。開会式や閉会式のプロジェクションマッピングによる演出が記憶に残っている読者も多いだろう。リオ五輪での実績をきっかけに、米国、欧州、日本において、エンターテインメントソリューションの商談に弾みがついているのは明らかだ。

 日本では、東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地である楽天Koboスタジアム宮城や、北海道日本ハムファイターズの本拠地である札幌ドームなどにスタジアムソリューションを導入した実績を持つパナソニックは、2020年の東京五輪関連で1500億円規模の事業創出を見込んでいる。この商談の主力となるのがコネクティッドソリューションズだ。

 また、テーマパークソリューションでは、2017年1月にディズニーとの協業を発表。ウォルト・ディズニー・パークス・アンド・リゾーツの「公式プロジェクション技術」に認定され、ディズニーワールドなどのアトラクションに、パナソニックのプロジェクションイメージングテクノロジーが導入されることになる。こうした動きも、テーマパークソリューションの大きな追い風になる。

 ただ、パナソニックが重点領域に位置付けるB2Bの推進役となるコネクティッドソリューションズとはいえ、全てが好調とはいえない。

 2016年度にパナソニックは、年初時点で収益改善事業の対象事業部は全社で14事業部あるとしており、そのうち半分がAVCネットワークス関連事業だと説明していた。いわば、立て直し事業が集中している社内カンパニーといえる。

 そして、これまで収益の柱だったアビオニクス事業では2016年度に減収減益を見込んでおり、2018年度までは成長は見込めないとの見方もある。その点ではカンパニー社長として、樋口氏を多くの試練が待ち受けているのは間違いない。

 かつてダイエー入社の理由を、「打席に立っていたら変化球が来て、それを打ってしまった」とたとえ、マイクロソフト入りの理由を、「どういう職種か、どういう会社かというよりも、どんな人物と仕事をするかが大切」としていた樋口氏。果たしてパナソニックには、どんな思いで入社するのだろうか。

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