「さっぽろ雪まつり」でオープンデータの実証実験、札幌市の狙いとは?(1/3 ページ)

日本マイクロソフトと札幌市などが共同で、オープンデータの実証実験を行うと発表した。最近では自治体とITベンダーが観光分野で協力するケースが増えてきているが、札幌には特に実証実験に向く条件がそろっているという。

» 2016年01月21日 07時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 日本を訪れる外国人観光客をITでどう「おもてなし」するか――。最近では沖縄、京都、広島など、観光地の自治体とITベンダーが協力し、さまざまな取り組みを行っている。

 1月19日、北海道札幌市とYRPユビキタス・ネットワーキング研究所(YRP UNL)、そして日本マイクロソフトが共同で、オープンデータを用いた実証実験を行うことを発表した。2016年1月30日に開催する「FISジャンプワールドカップ2016」や、2月5日から会期が始まる「さっぽろ雪まつり」の来場者に観光・施設情報、公共交通情報といったデータを活用して開発したアプリを利用してもらうというものだ。

photo 記者会見の様子。左から日本マイクロソフト 代表取締役会長の樋口泰行氏、札幌市市長の秋元克広氏、YRP UNL所長の坂村健氏

 両イベントに参加した観光客に、YRP UNLが開発した観光向けアプリ「ココシルさっぽろ」を提供、現在地に対応した施設案内や観光名所の解説文、交通機関の利用方法といった情報を多言語(日本語、英語、韓国語、中国語、タイ語)で展開する。位置情報とも連動し、観光看板の前に立つと地図や解説文をスマートフォンにプッシュ配信するほか、さっぽろ雪まつりの会場では、雪像に近づくと雪像の説明が配信されるという。

 観光にまつわる各種情報は、店舗やホテル、交通機関などの事業者から集約。オープンデータとして利用しやすい形に加工し、開発者向けにAPIも提供する。日本マイクロソフトはオープンデータの流通基盤として「Microsoft Azure」を、多言語翻訳サービス「Microsoft Translator」を提供するなど、技術面での支援を行う。

photo 実証実験全体の概要

 もちろん、ココシルさっぽろ以外にもオープンデータを活用したアプリが出てくる可能性は十分にある。2015年11月にオープンデータを使った札幌の観光アプリを作るハッカソンやアイデアソンを開催したほか、アプリコンテストも実施している。

 記者会見で、YRP UNL所長の坂村健氏は「今回、オープンデータを活用したアプリとはどんなものかを示すためにココシルを提供したが、これだけで十分というわけではない。ココシルを見て、いろいろなアプリが出てきてくれればいい」と期待を述べた。

photophoto ココシルさっぽろの画面。自動翻訳機能に対応し(左)、現在地近辺の施設の情報を一覧できる(右)

30%〜50%の割合で外国人観光客が増え続ける札幌

 今回の実証実験は、総務省の平成27年度オープンデータ・ビッグデータ利活用推進事業の1つである「オープンデータシティの構築に向けた実証に係る請負」を、日本マイクロソフトとYRP UNLが受託して実施するものだ。期間は2015年9月から2016年3月の半年で、4000万円の予算がついているという。

 とはいえ、札幌市自体はこの取り組みの前から“ITで観光を盛り上げる”という指針を立てていたそうだ。「札幌は、東京から京都、大阪にかけてのいわゆる“ゴールデンルート”に次いで、今外国人旅行者が増えている場所だと思っている」(札幌市観光文化局観光コンベンション部観光企画課 岩立氏)

photo 札幌市における外国人宿泊者数の推移。2011年度から30%〜50%近くの成長率で増加している(出典:札幌市)

 宿泊者数ベースで見ると、2011年度は約43万人、2012年度は約68万人、2013年度は約105万人、2014年度は約141万人と、近年は毎年30%〜50%近くの成長率で増加している。彼らに観光地の情報をどう伝え、誘導し、そして消費へとつなげるかが課題になっていたそうだ。そんな折に、日本マイクロソフトとYRP UNLから実証実験の提案を受けたという。

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