YRP UNLの坂村氏によれば、札幌はオープンデータ実験の場に適しているそうだ。同氏はその理由の1つに「プレイヤーの少なさ」を挙げる。
「実証実験を行うには、ある程度の規模の都市で行うのが望ましいが、例えば交通機関一つとっても、東京都などの都心でデータをオープンにしようとすれば、プレイヤーが多いため調整に膨大な時間がかかる。その点、札幌市は市営の交通機関などが多く、行政が中心となってプロジェクトを進められる。オープンデータを進める上で行政が旗振り役になるのは、非常に重要なこと」(坂村氏)
街の設計も実験に向く要素となった。今回の実証実験では、屋内や地下でも高精度な位置情報を取得可能にするためにBLE(Bluetooth Low Energy)対応のBeaconを利用するが、地下街が発達している札幌駅周辺は、Beaconの精度を試すのにうってつけの場所なのだという。スマートフォンを持った人が10メートル以内に近づくと、近辺の案内などを自動的に発信する仕組みだ。

今回の実証実験では、正確な位置を知るためにBLE(Bluetooth Low Energy)対応のBeaconを利用する(左)。札幌駅地下街に11個、さっぽろ雪まつり会場(大通公園)に11個のビーコンを設置したという(右)そして、日本が現在直面している課題として挙がりやすい「観光とスポーツ」の分野に札幌が強いことが挙げられる。札幌はウィンタースポーツの大会が頻繁に行われており、ココシルさっぽろでも、FISジャンプワールドカップ向けに、競技場のルールや出場選手の情報を滑走順に紹介する機能を実装する。
ITでどのようにスポーツ観戦を盛り上げるか。これは2017年の冬季アジア札幌大会、2019年に開催されるラグビーワールドカップ、そして2020年の東京オリンピック/パラリンピックなどの国際的スポーツ競技大会を見据えた取り組みだ。「札幌でうまくいかなければ、東京でできるはずがない――」。YRP UNLの坂村氏はこう断言する。
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