国立がん研究センター、治験業務を効率化する「リモートSDVシステム」を構築

国立がん研究センターは、治験結果の信頼性を確保する「SDV」を遠隔で行えるシステムをMicrosoft Azureを基盤として構築し、治験業務の効率化とコスト削減を実現。医薬品開発コストの削減や医薬品開発の促進につなげる。

» 2017年04月06日 08時30分 公開
[ITmedia]

 国立がん研究センターと同東病院は4月4日、日本マイクロソフトと富士通の技術支援により、治験業務における効率的かつ信頼性の高い「リモートSDV(Source Data Verification)システム」を、Microsoftのパブリッククラウドサービス「Microsoft Azure」を基盤として構築した。治験依頼者である製薬企業のSDVに対して新システムの導入を開始する。

 SDVは、治験依頼者が行う資料確認の業務のこと。医療機関から治験依頼者に提出される治験結果を記した症例報告書と、検査数値データや治験内容を記録したカルテなどの医療機関が保存する原資料とを照合・検証し、治験結果の信頼性を確保する。SDVでは、原資料の持ち出しが禁じられているため、従来は医療機関内で行う必要があり、医療機関内にSDV専用室の設置・管理などを行う体制整備が必要だったという。

 東病院では、年間100を超える治験を請け負っており、14室のSDV専用室は常に治験依頼者によって埋まっている状態だった。一方、治験依頼者にとっては、医療機関へ訪問するための交通費や宿泊費などのコスト、日中の限られた時間帯での作業による時間調整の負担などがかかることから、SDVの効率的運用が求められていた。

 東病院では、2013年に富士通の「電子カルテシステム」を導入し、2014年には電子カルテを含む治験における原資料を保管・管理するための「治験原データ管理システム」を構築している。

 今回、コストや事業継続性を意識し、Microsoft Azure上に、治験原データ管理システムにアクセスして原資料を閲覧するための「リモートSDVシステム」を開発。SDVにおけるさまざまな規制要件やガイドラインに合致したシステムを構築したことで、信頼性を確保しながら、真正性が確保された原資料を院外から直接閲覧できるようになった。原資料はリアルタイムに治験原データ管理システムに反映されるため、閲覧内容に時差が生じることはないという。

 加えて、パブリッククラウドを利用したことで、サーバ設置にかかる費用を大幅に削減するとともに、スペックをフレキシブルに変更できることから利用者の増減に対応可能になったとしている。

 国立がん研究センターでは、新システムによって、治験依頼者によるタイムリーなSDVが可能となり、モニタリングの効率化や医薬品開発コストの削減、医薬品開発の促進につながることが期待できるとしている。

 また、現在では治験のグローバル化が一般的となっていることから、海外からもアクセス可能な新システムを活用することで、グローバル化を促進し、治験受託数の増加や開発スピードの短縮につながると見込んでいる。

 さらに今後、グローバルスタンダードを見据え、CDISC標準(臨床研究や治験を実施する際に利用できる国際的なデータ取得・交換・申請のための標準)といった海外標準の採用も視野に入れたシステム開発を行い、治験に関する必須書類におけるドキュメントの電子化についても検討していくとしている。

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