POSデータを公開、売り場づくりはメーカーとともに――異端の販売戦略を支えるデータ分析のチカラ(2/3 ページ)

» 2017年04月26日 08時00分 公開
[寺澤慎祐ITmedia]

メーカーは競合他社の売れ行きも把握できる

参加者C: MD-Linkで直接POSデータを見られるなら、メーカーは競合の売れ行きも見られるということですか?

西川氏: そうですね。あるメーカーがカテゴリーキャプテンだった場合、担当していているカテゴリーの他メーカーの状況も把握できます。基本的には実績は公開されていて、直接的な発注見込みなどは公開されていませんが、それらのデータを想定できるようなデータは公開しています。

 一見、競合も含めたメーカーにPOSデータを公開することは問題があるように見えますが、その商品カテゴリーをどのようにプロモーションをしたり、売れるようにしたりしていくべきなのかを、メーカーさん同士が話し合う機会にもなるため、今のところ良い循環があると思ってます。

photo MD-Linkの画面。直接POSデータを見ることができる

メーカーと店舗の協働が生み出す、真の顧客志向

参加者D: 一般的な小売業では、商品を仕入れるバイヤーが彼らの論理で、売りたいものや売れそうなものをプッシュしてくるのだと思いますが、トライアルのようにきちっとデータ分析をしている場合、データとバイヤーの主観とでどう折り合いを付けているのでしょうか。

西川: トライアルでは、「餅は餅屋」ということで商品知識を豊富に持っているメーカーに売り場を任せていますが、共通の目標値をバイヤーと計画しています。それも、売上高だけでなく、客数や在庫といったマネジメント数値です。データとバイヤーが競合することはないですが、データを使えるメーカーと、使えないメーカーの差は出てきてしまうとは思います。

参加者D: 一般的な流通小売では、メーカーとバイヤーが強い関係で結ばれていて、バイヤーは良い場所を提供することを約束し、メーカーはどうにか良い棚を奪取するせめぎ合いで成り立っている点があると思います。でもトライアルのような方法ならば、本当に顧客志向の取り組みになるのでしょうね。

西川: まさしくそれが狙いです。欧米ではJBP(Joint Business Planning)といって、流通小売とメーカーが同じデータを基に、顧客のために商品や店舗を設計しています。そういう点では、外資系の消費財メーカーの方が理解が早いです。

参加者E(メーカー): 正直に言えば、自社商品が一番売れることが良いのですが、それだと顧客満足につながらないと思います。例えば、当社商品だけでトライアルの棚をいっぱいにして売り上げが3割減少してしまえば、トライアルも消費者も満足できない。当社も含め、ある商品カテゴリーの棚が1割でも向上すれば、消費者は喜んでそれを購入したということですし、トライアルもうれしい。当社もうれしいとなり、ある意味で“三方良し”となりますね。

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