さらに今回のイベントでは、オラクルのクラウドプラットフォームにおける今後の方向性についての説明があったので紹介しておこう。
日本オラクルの竹爪慎治執行役員クラウド・テクノロジー事業統括Cloud Platform事業推進室長は図2を示しながら、3つの方向性を挙げた。1つ目はIaaSで「次を見据えた拡充」。「次」とは、さらにエンタープライズニーズに幅広く応えられるようにすることだ。2つ目はat Customerで「モデルの拡充」。さらに多くのサービスに対応したマシンをラインアップしていく計画だ。そして3つ目はPaaSで「独自サービスの拡充」。より幅広い機能要件に対応したサービスを取りそろえていく予定だ。
そのうえで、竹爪氏は今後のクラウドプラットフォームに求められる要件について、図3を示しながら次のように説明した。
「これまでの一般的なクラウドは、ユーザー企業のビジネスが成長していく中で柔軟性や迅速性が重視されてきた。しかし、ビジネスが大きくなると、クラウドにも従来のオンプレミスやホスティングが提供してきた性能や安全性が求められるようになってきた。今後のクラウドはその両方の要件を兼ね備えて、壁なきサービスを提供していくことが求められる」
そして、「オラクルはベアメタルのパブリッククラウドとat Customerによって、両方の要件に応えていく」と語った。この点が、今回のイベントでオラクルが最も訴求したかったことではないか。ベアメタルは2017年12月に提供開始したばかりなので、at Customerの展開とともに盛んに強調していたのが印象的だった。
今回のイベント中に、日本オラクルは新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)とクラウド事業で協業することを発表した。NSSOLがat Customerによって、Oracle Cloudを自社のアウトソーシングサービスの一環として提供開始するという内容だ。
実は今回のイベント前日の4月24日、日本オラクルはOracle Cloud関連事業で国内のIT企業14社と新たなパートナープログラムに基づく協業を発表した。14社はいずれもこれまでオラクル関連事業を推進してきた有力企業だ。NSSOLはその代表格の1社である。つまり、日本オラクルにとってはこれまでと同様のパートナーエコシステムを、クラウド事業でも推進する態勢が整ったわけである。
こうしたパートナー企業との協業で、とりわけ注目されるのがat Customerのインパクトだ。「at Customerは自社のサービスとも柔軟に組み合わせることができて相性が良い」(NSSOLの大城卓取締役常務執行役員ITインフラソリューション事業本部長)との声もあるように、パートナー企業の期待は高まっているようだ。
このオラクルならではのユニークなサービスが、同社のクラウド事業もさることながら、今後のパブリッククラウド市場にどのようなインパクトを及ぼすか。“ダイナソーの逆襲”に、大いに注目しておきたい。
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