“クラウド後進国、日本”は、変われるか ガートナーの見方はWeekly Memo(1/2 ページ)

日本のクラウド市場はどのような状況になっているのか。ガートナージャパンが先頃、その最新動向について説明した。その中から筆者が興味深く感じた内容を取り上げたい。

» 2017年05月08日 09時00分 公開
[松岡功ITmedia]

日本企業のクラウド採用率は16.9%で「本格利用前夜」

 「日本のクラウドコンピューティングは“本格利用前夜”を迎えた」

Photo ガートナージャパン ガートナーリサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀忠明氏

 こう語るのは、ガートナージャパン ガートナーリサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀(またが)忠明氏だ。同社が2017年4月26〜28日に都内で開催した「ガートナーITインフラストラクチャ&データセンターサミット2017」で、同氏が日本のクラウド市場動向をテーマに行った講演のひとコマである。

 本稿では、亦賀氏の講演から、筆者が興味深く感じた内容を幾つか取り上げたい。

 まず、図1は、注目される技術の動向を示すガートナー独自の「ハイプサイクル」におけるクラウドの現状を表したものだ。この図によると、日本でのクラウドはここ数年「幻滅期」にあったが、いよいよ「普及活動期」へと移行する節目を迎えた。この節目が、冒頭の発言にある「本格利用前夜」を迎えたことを意味している。

Photo 図1 ガートナーの「ハイプサイクル」におけるクラウドの現状(出典:ガートナージャパンの資料)

 なぜ、本格利用の「前夜」なのか。その根拠となるのが「16.9%」という数字だ。これは、ガートナーが2017年1月に調査した日本企業におけるクラウドの採用率である。ちなみにクラウド形態別の採用率では、SaaSが31.7%、PaaSが18.3%、IaaSが16.1%、ホステッドプライベートが16.3%、プライベートが24.7%、ハイブリッドが14.4%となっている。

 亦賀氏はこのクラウド採用率について、「全体として着実に増加しているが、実はIaaSが2016年から、横ばいで推移している。これは、企業が既存システムをクラウドへ移行するのに、時間がかかっているのではないかと推察される」との見方を示した。つまり、IaaSの動向が今後のクラウド採用率の伸長、さらには「本格利用」に向けて大きなカギを握っているというのが、同氏の見立てだ。

 では、企業はどのようなIaaSを選ぶべきなのか。同氏が、「IaaS選定時の重要項目トップ10」として挙げたのが図2である。ただ、実は「プロバイダー自身がクラウドの本質を理解していること」が、ここ5年連続してトップのままだ。これについて同氏は、「IaaSをめぐる最大の課題が払拭(ふっしょく)されていないということ。プロバイダーは深刻に受け止めるべきだ」と警鐘を鳴らした。

Photo 図2 日本のIaaS市場におけるユーザー企業の調査結果(出典:ガートナージャパンの資料)

 図2の右側には、日本における主要IaaSの利用状況も示されている。ただ、このグラフについては「個々のIaaSの利用率における勢いを示したものとして捉えていただきたい」(亦賀氏)としている。

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