クラウドサービス市場の覇者は? 最新勢力図を検証するWeekly Memo(1/2 ページ)

企業向けクラウドサービス市場はどのように推移し、どんな勢力図になっているのか。最近発表された幾つかの調査データから読み解いてみたい。果たして覇者は誰か?

» 2016年08月15日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]

IaaS市場ではAWSとMicrosoftの“2強”が際立つ形に

 米Gartnerが先頃、パブリッククラウドのIaaS(Infrastructure as a Service)市場における上位10社を取り上げた「マジック・クアドラント 2016年版」を発表した。クラウドサービス市場におけるベンダーの勢力図を一目で分かるように示したものとして注目されていた発表である。

Photo 図1 IaaS市場を対象にした「マジック・クアドラント 2016年版」(出典:米Gartnerの資料)

 図1が、IaaS市場を対象にしたマジック・クアドラントの調査結果である。マジック・クアドラントはGartner独自のリサーチ手法で、リーダー、チャレンジャー、ニッチプレーヤー(特定市場指向型)、ビジョナリー(概念先行型)の4象限からなる図に、対象となる市場で競合するベンダーの相対的な位置付けを示したものである。ちなみに、図表の縦軸は「実行能力」、横軸は「ビジョンの完全性」を表しており、右上に位置付けられるほど評価が高いことを意味している。

 図1の通り、米Amazon Web Services(AWS)と米Microsoftがリーダーの位置にあり、他の競合をリードしている。AWSとMicrosoftの間も実行能力においてまだまだ差があるが、2015年版と比べると少し差が縮まったようだ。2015年版については2015年6月1日掲載の本コラムの図2を参照いただきたい。

 比較した結論からいうと、4位以下では変動があるものの、リーダー2社の強さがますます際立ってきた形だ。

 米IDCが先頃発表したパブリッククラウドによるIaaS市場の規模は、2015年で126億ドルだったが、2020年にはその3倍強の436億ドルに達するとしている。年間平均成長率(CAGR)は28%となる計算だ。同社のリポートで興味深かったのは、6000社を超える企業を対象とした調査で「3分の2がIaaSを既に採用、または採用予定がある」ことが分かった点だ。

 一方で、「80%は2018年までにハイブリッドモデルを採用する」とも予測しており、つまりはパブリッククラウドをハイブリッドモデルとして利用する形態が主流になりつつあるといえそうだ。

 ただ、企業向けクラウドサービスはIaaSだけではない。同じパブリッククラウドでもPaaS(Platform as a Service)もあればSaaS(Software as a Service)もある。その割合はざっくりIaaSが4割、PaaSが1割、SaaSが5割というのが現状だ。また、パブリッククラウド環境内にプライベートクラウド環境を構築してサブスクリプションモデルで提供する「ホステッドプライベートクラウドサービス」も増えてきている。となると、企業向けクラウドサービス市場の覇者は一体誰なのか。

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