MSが提唱する「インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ」とは何か Microsoft Focus(2/2 ページ)

» 2017年05月20日 11時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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「Azure Cosmos DB」で“地球規模”のDB強化を

――Microsoftでは、「プロダクティビティとビジネスプロセスの改革」「インテリジェントなクラウドプラットフォームの構築」「革新的なパーソナルコンピューティング体験の創造」という3つのアンビジョン(野心)を掲げ、業績の発表も「Productivity and Business Processes」「Intelligent Cloud」「More Personal Computing」というように、それにのっとったものになっています。この「Intelligent Cloud」も、今後は「Intelligent Cloud/Intelligent Edge」というようになりますか?

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沼本:3つのアンビションはわれわれが目指す方向を示すものであり、これを通じて顧客のデジタルトランスフォーメーションをサポートするという意思の表れです。しかし、今回のインテリジェントクラウドとインテリジェントエッジは、開発者に向けて、世の中の新たなアプリケーションパターンの方向性を示したものであり、「Productivity and Business Processes」「Intelligent Cloud」「More Personal Computing」という全てのアンビョンのなかに反映される流れといえます。

 Buildの会期2日目には、PowerPointについての講演で、翻訳機能を実現する「PowerPoint Translator」のデモストレーションを行いました。PowerPointは、エンドユーザーが活用するクライアントアプリケーションですが、そこにAzureのコグニティブサービスを使って翻訳されたコンテンツを提供できるようになっています。これも、クラウドとエッジが有機的に連動することによって実現しているもので、インテリジェントクラウドとインテリジェントエッジによる1つの考え方といえます。

 「Productivity and Business Processes」に分類されるOfficeの世界でも、インテリジェントクラウドとインテリジェントエッジによる新たなアプリケーションパターンを実現しているのです。

――もう1つ、今回のBuild 2017では「Azure Cosmos DB」を発表しましたが、これはどんなものですか?

沼本:膨大なデータが全世界で生成され、さまざまなアプリがクラウドで活用されはじめているなかで、課題となっているのは、「統合的に管理したい」ということ、さらに「データを同期するまでタイムラグがある」ということです。

 そうした課題の解決に向けて、地球規模のデータベースとしてMicrosoftが提案するのがCosmos DBです。Cosmos DBは1つの大きなデータベースとして構成され、日本からでも、米国からでも、同時に書き込むことができるのが特徴であり、これは業界初の、ユニークなものといえます。

 Azureのデータセンターは世界に38リージョンあり、AWSとGoogleを足した数よりも多いのですが、Cosmos DBは、この全てのデータセンターで利用できるデータベースであり、使いたいリージョンを自由に選択することもできます。

 また、データベースにおいては、データがアップデートされたら、次にアクセスした際には、最新のデータを確実に反映したものが利用できるというのが前提となります。しかし、これではデータが反映されたことを待たなくてはいけないため、どうしても遅くなります。一方で、ソーシャルメディアのような利用では、どんなコメントが出ているのかを確認する場合に、0.001秒前に誰かが書き込んだものが検索結果に出なくてもそれほど問題にはなりませんが、スピードを重視したいという人にはこうした仕組みを活用し、あとで整合性を取ればいいということになります。

 Cosmos DBでは、このイベンチャルコンシスタンシィーと、ギャランティードコンシスタンシィーの間に5つのオプションを選択でき、スピードとコンシスタンシィーを、SLAを設けながら、デベロッパーに提供することが可能になります。サイバーマンデーのように、数多くのアップデートが必要な際にも、ワールドワイドのスケールで対応でき、米国で書き込んだものが日本で使用するアプリにすぐ反映されるという環境を提供します。

 Microsoftは社内でさまざまなインターネットサービスを活用していますが、そこで鍛えられたサービスとして完成度を高めており、その点でもMicrosoftにしか提供できないサービスといえます。

――今回のBuild 2017は、Microsoftのクラウドビジネスにとって、あるいは参加した開発者にとって、どんな意味を持つものといえるでしょうか?

沼本:開発者向けイベントであるBuildは、テクノロジーの方向性を示し、今後のデベロッパーに対して、「こんなアプリケーションを開発してほしい」という提案を行う場になっていますが、そのなかでも今回は、クラウドのトピックに割かれた時間が多かったのは事実です。

 マイクロソフトにおけるクラウドビジネスの成長は高い伸びを示していますし、2018年度に掲げている「クラウドビジネスでの売上高200億ドルを上げる」という目標に対してもオントラックで成長しています。

 Build 2017のなかでは、デベロッパーが新たに考えなくてはいけないテーマは、「マルチデバイス」であり、「AI」であり、さらには、「サーバレステクノロジー」であるということを示しました。これらは、全てクラウドと密接に関連するものです。

 マルチデバイスは、クラウドを活用するためのエンドポイントというだけではありません。Build 2017で発表された新機能のなかでは、Windowsデバイスでカット&ペーストしたものを他のOS環境のデバイスでも利用できたり、1人のユーザーがさまざまなデバイスを使いながら、タイムラインをトレースできるようになったりといった機能も、Windows単体の機能としてではなく、Windowsのサービスとして提供しており、ここにクラウドとエッジの有機的な連動が生かされています。

 AIについても、データを集め、モデルを作り、それをエッジにデプロイするという点での活用は、先に触れたように、クラウドとエッジの有機的な連動によって実現するものです。

 このようにBuild 2017は、インテリジェントクラウドとインテリジェントエッジによって実現する世界を示し、そこに向かってマイクロソフトが進んでいくこと、デベロッパーもその流れを捉えてほしいということを示すものになったといえます。

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