“AI記者”による省力化と効率化の行く先は――日本経済新聞社の働き方改革AWS Summit Tokyo 2017(3/3 ページ)

» 2017年06月05日 15時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]
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現状はAIとの共存、役割分担が必要な段階

 現状、決算サマリーはβ版ながら日経電子版を筆頭に、日経会社情報DIGITALの「決算サマリー」コーナーや、会員制ビジネス情報サービスの「日経テレコン」で利用されている。

 AI記者が記事を生成できるのは、対象が決算の短い速報に限られたり、ある程度決まった形でのPDFおよびXBRLのデータが提供されたり、決算記事の要件が比較的決まっていたりするからで、まだまだ人間にはかなわないし、日本経済新聞の紙面には使われていないじゃないか、という言い方も可能だ。

 とはいえ、完全自動「決算サマリー」のページには下記のようなFAQが用意されている。

  • 質問 : 通常の記事とはどのように見分ければ良いでしょうか?
  • 回答 : 記事のタイトルや末尾などに自動で生成された旨を記載しています。

 AI記者の記事に上記のような注釈がなく、メディアのWeb画面や紙面に展開されていたら、果たして見分けが付くのだろうか。

 藤原氏は「AI記者を通して、実ビジネスに応用するにはハードルが非常に多く、まだまだ対応途中だ。それぞれの問題に対して、トライ&エラーをしていかないとだめだが、テクノロジーへの理解が深い人と、仕事の現場をキチンと理解している人が同じならベストだが、どちらもいないとうまくいかない。また、そういった人材を育てていく必要がある」と指摘。

 「AIのポイントは今、共存と役割分担で、それを見定めて業務の再設計が必要な段階にある。人のやっている業務をベースにしてAIに置き換えるなど業務の再設計を実施し、AIに置き換えたら、ひらめきや直感、創造性といったメディアの競争力を生み出す業務を増やしていくという取り組みが必須だ」とし、「AIが入ってくるのは、かつて電話や印刷などが発明されパラダイムシフトが起きたのと同じこと。それについて行ける企業が伸びるし、ついて行けなくなった企業は滅びる。日経はテクノロジーメディアを目指しており、情報の信頼の蓄積をさらに増やし、スピードを上げていきたい」と抱負を語った。

photo 日経が考える“AI記者との付き合い方”
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