それでも無理なら、代役を立てるのが有効だ。
手を尽くしてもなかなか信頼されないこともある。時間がなくて信頼を勝ち取れないこともある。そんなときは、既に信頼を得ている別のメンバーに窓口になってもらう。同じ話でも、説明する人が違うと、受け取られ方が全く違う。
あるプロジェクトでは、企画部門の方が業務改革のリーダーだったが、現場の方からは「自分たちより業務のことを知らないやつじゃ、話にならないだろう?」という目で見られているようだった。なぜか最初から“けんか腰”な感じだった。
このときは、施策プランを説明したり質問に答えたりするのはプロジェクトリーダーが務めたが、施策のメリットを強調したり、現状から脱却することの大切さを説明したりするのは、別のプロジェクトメンバーが担当した。その方は以前にその部署にいたので、「現場を分かってくれている同志」と映るからだ。
「誰が話そうが、良いプランは良いプラン」というのは、なかなか通じない。組織を動かすには「誰の口から話されるか」も中身と同じくらい重要なのだ。
レベル4の「つぶしにかかる」になると、露骨な反対運動が展開される。
公式の場で何も言わなくても、裏で「アレはうまくいかない」「俺は最後まで反対する」と言って回る人もいるし、役員、経営陣にあることないことを吹き込むケースもあるだろう。
ここまで来ると、できることは限られるのだが、数少ない対処方法から2つ、紹介しよう。
「おれの周囲はみんな反対している」とうれしそうに言う人がいる。自分の行動を他者の言動に合わせる、または近づけることを「同調効果」というが、反対意見でも“後ろ盾”があると、深く考えずに反対してしまうことがあるのだ。
こういった場合は一人ひとりと膝を付き合わせて、しっかり話をしよう。
会議のようなオフィシャルな場ではなく、席に行って個別に話してみると、「○○さんが大反対しているでしょう? 僕は彼ほど反対じゃないんだけどね。懸念は1つだけだから」といった流れになることも少なくない。
ここまで話ができればしめたもの。きちんと懸念を払拭して、賛成側に付いてもらおう。
反対派が大勢を占めているとつらいが、“個別訪問”が進んで賛成派が大勢を占めてくれば、賛成側の同調効果を期待することもできる。これは、本当の抵抗者を切り分ける作業、ともいえるだろう。
最後は、トップの力を全面的に借りるしかない。
トップからガツンと言ってもらうのはもちろんのこと、場合によっては人事権を発動してもらうことも必要かもしれない。数人の抵抗勢力のために、全社として重要な取り組みをつぶさせるわけにはいかない。
ただし、このカードを使うなら、日頃からトップにプロジェクトの意義や効果をきちんと伝えて味方になってもらう必要がある。
以上が、「頑固な抵抗」への対処方法だ。対応方法の少なさを見ても分かる通り、レベル4になってしまうと、手遅れと考えてよい。ここまで来ると全面対決を避けるのは難しくなってしまう。何としてでも、この手前で食い止めよう。
コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.