年間2400万個、世界一売れるフィナンシェをITで支える“元ベテラン店長”【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(2/3 ページ)

» 2017年11月30日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

新ツールに難色を示す現場の“抵抗勢力”

 当時は10年以上使われているシフト管理用のExcelフォーマットが人気で、それを一切使わずに新たなツールを使わなければいけないことに対し、反発の声が多く上がった。同時期にPOSの推進も行っていたため、ITツール自体に“アレルギー反応”を起こす社員も多く、「まず触ってもらう」ということがなかなかできなかったそうだ。統括マネージャーも、仕事のフローが変わることに抵抗を示す人が少なくなかったという。

 「完全に私の説明不足だったと思っています。ツールの説明会も、全店長を集めた場で1回しか行っていませんでした。現場の負荷も減らせると思っていたのですが、それはツールに慣れてからの話。いきなりツール導入を聞かされた側からすれば、これは本部のための施策に見えてしまいます。

 現場の店舗は大変だということは分かっていました。でもその一方で、本部の人間たちも『会社を良くしたい』という思いで働いているのは同じです。でもその気持ちは簡単に現場に伝わるわけではない。ここが難しいところですね」(森田さん)

 現場の店舗では、シフトの自由さがウリの1つでもあったため、ツールを使った管理で自由度が減ってしまうというデメリットもあったほか、ツールの使い方をアルバイトに教える教育コストも増える。社員よりもアルバイトが多いため、定期的に変わる人員をシステムで管理することに違和感を持つ社員もいたという。

photo SaaS型サービス「シフオプ」の画面例(提供:シュゼット)

ツールを使わなければ「店長職を降格」

 そこで森田さんは、データ分析を進めようと考えていた社長を始めとする上層部への説得を優先し、シフオプの利用を“会社全体の方針”とした。現場の状況を可視化できるメリットが経営陣には刺さったそうだ。

 現場に対しては、「使い続けてもらわない限り、ツールのメリットは分かってもらえない」と割り切り、シフオプを使う環境を作る方針で施策を進めた。シフオプの利用を業務の必須スキルとし、「使わなければ店長職を降格」というような手段を取ったこともある。

 それでもシフオプの利用を進めているうちに効果は上がってきた。必要な人員の把握がしやすくなったことで、人員が余っている店舗から足りない店舗に人を派遣したり、店舗ごとのアルバイトの採用計画が立てやすくなったりしたという。人件費の予測についても、以前は2割くらいずれる店舗があったが、現在では全社で5%程度のずれに抑えられているという。

photo シフオプのヘルプ機能を使い、人員が余っている店舗からの派遣をお願いすることもできる(提供:シュゼット)
photo 人件費の予測精度も高まったそうだ(提供:シュゼット)

 今後は、店舗での導入で得た結果とノウハウを基に、お菓子の製造現場での導入も進めているという。現場のニーズもシフトのフォーマットも異なるが、反省を生かして導入のフォロー体制を重視するそうだ。

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