インタビュー
» 2018年05月21日 09時30分 公開

ただの客寄せか、省人化の救世主か:「Alexa居酒屋」はなぜ生まれた? オーダーシステム開発の苦労とその可能性 (3/5)

[大内孝子,ITmedia]
photo Alexaオーダー席にある飲み物メニュー。今回のシステムでは、カテゴリーを宣言し、その次に番号を指定するというルールにしている

 特に苦労したのが、スマートスピーカーに慣れてない人が行う注文方法と、言語認識側の関係性だ。今回のシステムでは、カテゴリーを宣言し、その次に番号を指定するというルールにしている。

 「最初はカテゴリーを分けずに、普通に『ウーロンハイ、2杯』という形にしていたのですが、それだとオーダーメニューが増えたときに“やむなく”聞き取れない場合も出てきます。例えば『レモンサワー』と『メロンサワー』。人間でもたまに聞き違えますよね。言い直す、というストレスは想像以上に大きかったんです」(椋代さん)

 「ハイボール」と「コークハイボール」というのも“難敵”だった。話し始めの“コーク”の部分をスマートスピーカーが認識できなければハイボールになってしまう。聞き取れない理由が外的要因にあったとしても、ユーザーには理解されない。それは、サービスの足を引っ張る点にもなりかねないのだ。

 この弱点を回避するために、番号でオーダーする形式にしたが、そこにも問題がある。番号の発話は短いため、これまた聞き逃してしまうリスクがあったのだ。そのため、最初にカテゴリーを宣言する方法に落ち着いたという。幾つかのスマートスピーカーで試し、聞き取った文字のログを解析して初めて分かったことだった。

 細かくチューニングしたり、パターンを増やしたりと精度を高めることもできたが、その分工期も長引く。導入後のことも考えると、メニューの追加や変更が簡易的に行えないと、運用の改善に時間がかかってしまう。店舗における運用の柔軟性とスピードも考慮した“妥協点”として、番号を指定する形式に決着したのだという。

photo 注文された後は、店長が持つタブレットのChatWorkアプリにこのような通知が飛ぶ

数あるスマートスピーカーの中で「Amazon Echo」を選んだワケ

 今回のシステムで、「Amazon Echo Dot」を採用した最も大きな理由は「個体番号」の有無にある。複数の席で使う場合、個体番号が卓番を見分けるロジックになるのだ。逆にいえば、個体番号がないと、新たなロジックを作る必要が出てくる。

 「もともと、Google Homeを使う予定でしたが、個体番号がない点が壁になりました。例えば『OK Google、飲み物メニューを開いて』を、『OK Google、ドリンクの注文をお願い』にするなど、卓ごとに起動ワードを変えるといった工夫が必要になります。しっかりロジックを組むには相当な作り込みが必要で、開発スピードが下がってしまうのです」(椋代さん)

 また、Google Homeの聞き取り精度の高さが仇になることもあった。逆に必要がない情報まで認識してしまうためだ。Amazon Echoの場合は、スキルを起動することで各種機能が有効になるため、聞き取るべき言葉を絞ることができる。とはいえ、スキル申請を一度リジェクトされるなど、Amazon Echoでシステムが構築できるかどうかは、直前まで見通しが立ちにくかったという。

 逆にブラッシュアップを経て、追加された機能もある。店員を呼ぶ機能と会計機能だ。最初はオーダー以外の機能がなかったそうだが、「それだとつまらない」と感じたという。店員を呼ぶ機能も、単に呼ぶだけでは“芸がない”ということで、Amazon Echoが「店員さーん、店員さーん」と叫ぶ演出にした。場も盛り上がるということで評判はいいそうだ。

 「その声で店員さんに届くのか」という質問が出ることもあるという。もちろん、声は届かなくともタブレットに通知が届く。一見、わざわざ声を出す必要性はないようにも見えるが、「呼び出しボタンなどと比べ、店員を呼んでいる状態だということがすぐに分かるのがメリット」(椋代さん)とのことだ。

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