インタビュー
» 2018年05月21日 09時30分 公開

ただの客寄せか、省人化の救世主か:「Alexa居酒屋」はなぜ生まれた? オーダーシステム開発の苦労とその可能性 (2/5)

[大内孝子,ITmedia]

Amazon Echoは、店舗にどんなメリットをもたらすか

photo ヘッドウォータース 営業本部 プロジェクトマネージャ/ディレクターの椋代宏平さん

 Alexaオーダー席のシステムを開発したのはヘッドウォータースだ。卓上型コミュニケーションロボット「Sota」を居酒屋に導入した実績があったことから、同店を経営するロイヤルダイニングが別店舗でのSota導入を検討していたが、真新しさが必要だと考え、話題になっているスマートスピーカーを使う案が上がったという。

 しかし、導入を検討していた店舗はカフェ風のオープン席であったため、他テーブルの会話がノイズとして入ってきてしまう。そこで近くにあった個室居酒屋である「天空の月」に白羽の矢が立ったというわけだ。開発担当となったヘッドウォータースの椋代さんはこう振り返る。

 「天空の月に行った際に、POS連動で注文できるのが一番うれしいという要望を頂きました。スマートスピーカーで注文できるソリューションが世の中になかったので、挑戦してみようという話になりました。開発担当は私を含めて2人だったのですが、どちらも飲食業界で働いた経験があったので、悩みやニーズはよく理解できました」(椋代さん)

 スマートスピーカーで注文することで、店舗にどんなメリットをもたらせるか――。客や店舗の利益につながらなければ、すぐに飽きられてしまう。例えば、Amazon Echoで注文できるメニューには、当初ビールがなかった。それもそんな視点から生まれた仕様だ。

 「最初にレクチャーが必要なこともあるので、1杯目は店員に頼むことになります。1杯目はビールを頼む人が多いと思いますが、2杯目以降から別のお酒に変えたいという人も少なくありません。お店が頼んでもらいたいお酒を意図的にメニュー化し、注文傾向に差が出るかというデータを取る狙いもあるんです。

 ユーザビリティを損なわないように、ビールを頼まれた際の返答も用意しました。ビールを受け付けるのは“店員さんの仕事”であり、スマートスピーカーが奪ってしまっては申し訳ない……という(笑)。少しずつメニューの改善を施し、今はビールも含め40品目のオーダーを取れるようにしています」(椋代さん)

 「面白いけど、それでメリットは何?」――。新たなテクノロジーをビジネスに実装しようとする際、つい、作り手が陥りがちなのが、この視点を忘れることだ。ユーザーの利益につながらないツールは、結局発展することはない。はやりものであっても、単なる「客寄せの道具」になってしまっては意味がない。

試行錯誤の末に生まれた「注文のルール」

 開発の期間は、非常に短かかったという。2017年12月から社内で実験を繰り返し、本格的な実装に入ったのは2018年2月ごろ。微調整を行い、3月19日にリリースした。ロジック作りを椋代さんともう1人のエンジニアで手掛け、ブラッシュアップは他部署や社長を含めた6人がかりで、毎日30分程度の時間を使って行った。

 「やっていることはテキストデータの分岐なので、大したことはありません。多分、アプリを作るだけならどの会社でもできるでしょう。しかし、居酒屋というロケーションでどう運用を組み、認識の間違いを減らすか、といった試行錯誤やブラッシュアップの方が大変でした」(椋代さん)

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