人とAIの共存で進化する「おもてなし」

神田の居酒屋にロボットが来た日――“飲みニケーションロボット”の作り方【総力特集】人とAIの共存で進化する「おもてなし」(1/4 ページ)

東京・神田の居酒屋「くろきん」に卓上型コミュニケーションロボット「Sota」が登場。飲み会を盛り上げる仕掛けとして、同店の来店者増に一役買っているという。居酒屋にロボット、このプロジェクトはどのようにして始まったのか。その裏側に迫った。

» 2017年03月07日 08時00分 公開
[大内孝子ITmedia]

 東京・神田駅から徒歩1分のところにある居酒屋「くろきん 神田本店」。何の変哲もないこの居酒屋に2016年12月、1体の小さなロボットがやってきた。

 そのロボットの名前は「Sota」。高さ30センチ弱の小さなロボットだが、乾杯の音頭を取ったり、上司にツッコミを入れたり、店員さんに絡んだり、一緒に飲み会のメンバーとして場を盛り上げてくれるのだ。

 Sotaを設置したテーブル席を、ロボットと飲める「飲みニケーションロボット席」として予約を受け付けたところ、予約が殺到し、来店者数も増加。実証実験として開始したプロジェクトから一転、常設することが決まった。

photo 6人用のテーブル席に1体の「Sota」が設置された。Sotaはヴイストン、日本電信電話、NTTデータが共同開発した卓上型のヒューマノイド型ロボットだ

飲み会を一緒に楽しむロボットが大人気

 ロボットが飲み会を盛り上げると言っても、ロボット自身が急に何かを話すというわけではない。Sotaには、ヘッドウォータースが開発するクラウドロボティクスサービス「SynApps」が実装されている。来店したお客が専用アプリ(SynApps Mobile)をインストールしたスマートフォンを使って、Sotaにコメントを言わせるというシステムだ。

 アプリでは選択肢で選べる定形文言のほか、好きな文章を入力して話させることもでき、自分の顔写真をアプリに登録すれば、次の来店時にSotaから“常連さん”として名前を呼んでもらえる。

photophotophoto 会話の流れを見てSotaに喋らせたり(左)。自由に言葉を入力したりできる(中)。顔認識で登録し、Sotaとコミュニケーションすることも可能だ(右)
photo ゲイト 広報 尾方里優さん

 くろきんを運営するゲイトによると、ロボットとの会話を通して客が仲良くなり、常連が増えるのが狙いだという。

 「居酒屋で接客するスタッフは、1日100人以上のお客さまと出会います。お店のスタッフにとってお客さまは1対多数の存在ですが、逆にお客さま側からすれば、スタッフとは1対1の関係です。この間は仲良く話をしたのに、次に来たときに『初めて』という顔をされたら、さびしく感じてしまう。もちろんお店側としては覚えたくないわけではありませんが、人間には限界があります。そこでロボットの力を借りようと考えたのです」(ゲイト広報の尾方里優さん)

 導入の効果は顕著だ。来店者数は前年比で12月は10%、1月は14%増加した。もちろん“物珍しさ”から予約する客が多いのも事実だが、「この席を予約するために、飲み会の予定を動かしたという例もある」と尾方さん。Sotaの集客力の強さを物語るエピソードだ。

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