ニートがたった2年で一人前のITコンサルに なぜ、クラウドネイティブはあえて「IT素人」を雇うのか(1/3 ページ)

人手不足に悩むIT企業が優秀な人材探しに躍起になる中、あえて「IT業界未経験者」を雇って一人前のITコンサルに育てている企業がある。いったいどんな人材育成をしているのか。

» 2018年06月01日 07時00分 公開
[吉村哲樹ITmedia]
Photo あえて「IT素人」を雇っているクラウドネイティブの社長、齊藤愼仁氏。この日は自宅からテレビ会議で取材に参加した

 人手不足に悩むIT企業が優秀な人材探しに躍起になる中、あえて「IT業界未経験者」を雇って一人前のITコンサルタントに育てている企業がある。AWS専業コンサルサービスcloudpackを手掛けるアイレットからスピンアウトした齊藤愼仁氏が率いるITコンサルティング会社、クラウドネイティブだ。

 日本のIT人材不足は年々深刻化しており、経済産業省が2016年6月に発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によれば、2015年時点で既に約17万人のIT人材が不足しており、これが2030年になると約59万人にまで膨れ上がると予想している。

 こうした事態を前に、今や官民を挙げてIT人材の育成施策の検討が進んでいる他、各企業とも優秀なIT人材の獲得に奔走している。IT人材の待遇を改善する企業や、独自のインセンティブ制度、人材育成策を打ち出す企業も増えている。

 そんな中、なぜクラウドネイティブはユニークな人材採用方針を貫き、成果を上げているのか。社長を務める齊藤氏に聞いた。

なぜ、あえて「IT素人」を雇うのか

 クラウドネイティブの従業員は11人(2018年5月末時点)。そのうち6人がIT業界未経験者だ。未経験者の前職は、パリでオペラに出演していた声楽家、飲食店店員、栄養士など、実にさまざま。採用した未経験者は今、ITコンサルを目指してバックオフィス業務やサポートエンジニアの仕事をこなしている。

 「サポートエンジニアは、入って2カ月目にしてAzureADのPowerShellコード書いてます。人にもよりますが、だいたい1年半から2年で一人前になりますよ」(齊藤氏)

 IT素人を雇用して教育するというやり方は、実は齊藤氏がcloudpackにいた時代からやってきたことで、前職で一から育てて一人前の情報システムセキュリティアドバイザーとなったスタッフもクラウドネイティブに移籍している。

 従業員11人という、普通なら人を育てる余裕などなさそうに見える状況の中で、なぜ、あえてIT業界未経験者を雇うのか。齊藤氏によれば、同社の採用方針にはれっきとした根拠があるという。

 「何の経験もスキルも持たない人間はまっさらな状態だから、業務に必要な知識やスキルを一生懸命吸収してくれるんです。加えて自分たちの環境や会社への適合性も高い。なぜなら、他を知らないから。会社の色に染められるのは大きいですね」(齊藤氏)

 もちろん、業界未経験者の誰もがこれだけの成長を遂げられるだけのポテンシャルを持っているわけではない。齊藤氏が人材採用に当たって重視するポイントは「物事に本気で取り組めるかどうか」、そして「コミュニケーションに長けているかどうか」の2点だ。

 「どんなことでもいいので、何かにとことん“ガチ”で取り組んだことがあるかどうか。惰性やちょっとした好奇心ではなく、とことん本気になって物事に取り組めるかどうか。この点を見ますね。あと、仕事は決して1人でできるものではありませんから、コミュニケーション能力に長けているかどうかは重視します。周りと壁を作って、『私の職責はここまでだから、この仕事しかやりません』という人より、周囲から気軽に声を掛けられて頼られる人の方が絶対に伸びますから」(齊藤氏)

ネトゲ廃人に突然、正社員のオファーが

 こうした採用方針に基づき、実際に素人同然の状態からITエンジニアとしてのキャリアをスタートさせたのが、現在クラウドネイティブで情報システムセキュリティアドバイザーとして活躍する高橋聖徳氏だ。同氏は、齊藤氏がクラウドネイティブを創業する前に働いていたアイレットに入社し、その後、齊藤氏が独立・起業した際に行動を共にした。

 高橋氏は、前職の会社に入社する前の自分について、「ニート同然だった」と振り返る。

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