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» 2018年06月01日 07時00分 公開

ニートがたった2年で一人前のITコンサルに なぜ、クラウドネイティブはあえて「IT素人」を雇うのか(3/3 ページ)

[吉村哲樹,ITmedia]
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「実際に触れて学ぶこと」の重要性

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 こうして高橋氏も、簡単なPCトラブルのサポートから始まり、アカウント管理、SaaSアプリケーションのカスタマイズ、果てはIT監査対応の支援など、入社後2年足らずの間に極めて広範な業務の実践を通じて、「頼れる情報システムスタッフ」へと成長を遂げた。

 短期間で高度なITスキルを身につけることができた要因の1つとして、高橋氏は「直接、さまざまなサービスに触れて学べる環境があったことが大きかった」と当時を振り返る。

 「普通の会社なら、経験が浅い技術者には絶対に触らせないようなシステムもどんどん触らせてくれて、実際に手を動かしながら学べたのは大きかったですね。作業手順も、最低限のことはあらかじめ決まっているものの、自身で考えながら新たに手順を考えなくてはならないことも多々ありましたから、そうした経験をたくさん積んだことが糧になったと思います」(高橋氏)

 自身の経験を振り返り、高橋氏は「私のようにニートのような生活を送っていた人間にとって、企業の情報システム部門の仕事はIT業界への入り口として最適なのでは」(高橋氏)と話す。

 「もちろん高度なシステム設計・開発の仕事はハードルが高いですが、社内ヘルプデスクの仕事であれば、最低限のPCスキルがあれば何とかなります。PCのセットアップやキッティング、トラブル対応であれば予備知識がなくてもこなせますから、ニートには情シスがおすすめです」(高橋氏)

IT素人の育成に不可欠なものとは

 現在、クラウドネイティブで働いている従業員のほとんどが、高橋氏のようにITエンジニアとしてのバックグラウンドを一切持たない状態から、仕事の実践を通じて一人前のエンジニアへと成長を遂げているという。

 多くの企業が高いITスキルを持つ人材の獲得に躍起になっているのを尻目に、独自の人材戦略を貫く齊藤氏の目に、現在のIT人材不足の問題はどう映っているのだろうか。

 「未経験者を一人前のIT人材に育てるために、よく教育プログラムや研修制度のことが話題に上りますが、個人的にはあまり本質的な解決策ではないと思うのです。それよりも重要なのは、既に一人前に育って現場の第一線で活躍している人材が、いかに自身の経験やスキルを後に続く人材に継承できるかどうか。現在、第一線で活躍している人たちは、目の前の仕事に追われて後継の育成をおろそかにしがちですが、優れた人材の育成過程をそのまま横展開できれば、これに勝る育成手法はありません」(齊藤氏)

 そのために、企業や組織全体の方針として、第一線の人材も巻き込みながらIT未経験者の育成に取り組むべきではないかと齊藤氏は主張する。

 また同氏は、IT未経験者をさまざまな部署、さまざまな立場の人たちと交流させることが重要だと話す。自身の能力ややりたいことがはっきりしている経験者とは違い、IT未経験者は良くも悪くも自身の可能性や適性に無自覚であり、どんな仕事に向いているかは本人も周囲も分からないからだ。広く社内の人間とコミュニケーションさせることで、自然と活躍の場も見えてくるという。

 「企業や組織は、たとえIT未経験者であっても組織内で広くコミュニケーションが取れるような環境を提供するべきですし、企業の門をたたくIT未経験者の側も、一定以上のコミュニケーション能力が求められるのです」(齊藤氏)


 齊藤氏は、前職の上司から掛けられた次のような言葉が今でも強く印象に残っているという。

 「齊藤君には、たとえ刑務所から出所したばかりの人を採用したとしても、会社がきちんと機能するようにしてほしいんだ」

 今でも、「折に触れてこの言葉を思い出す」と齊藤氏。

 「『その人の過去や人間性が分からなくても、システムで統制できるレベルを目指せ』ということだと解釈しています。素人だろうがニートだろうが、ポテンシャルがある人をどんどん採用するのは、こうした考えが根底にあるから。今後もこの言葉を胸に、人を育てるつもりです」(齊藤氏)

【聞き手:後藤祥子、吉村哲樹】

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