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» 2018年06月01日 07時00分 公開

ニートがたった2年で一人前のITコンサルに なぜ、クラウドネイティブはあえて「IT素人」を雇うのか(2/3 ページ)

[吉村哲樹,ITmedia]
Photo 情報システムセキュリティアドバイザーの高橋聖徳氏

 「大学受験に失敗してしまい、勉強するのがおっくうになってオンラインゲームにハマっていました。そこで、同じゲームをプレイしていた齊藤と出会ったんです。一時期は、24時間Skypeでつながった状態で協力プレイを行っていたほどハマっていましたね。それからしばらくして、突然、『ヒマなんだったら、うちの会社で働いてみない?』と声を掛けられたんです」(高橋氏)

 当時、齊藤氏が勤務していたアイレットは、最先端のクラウド技術を駆使したSIビジネスで急成長を遂げていた。しかし高橋氏はというと、多少のPCスキルがあるくらいで、プログラミング経験はゼロ、「クラウドって何?」というレベルだった。当然、高橋氏自身も「こんな素人に務まるのだろうか……」と不安が先立ったというが、齊藤氏の「むしろ未経験者の方が知識の吸収が早いから大丈夫!」という声に後押しされ、当時住んでいた地方の実家を出て上京した。

 もちろん、齊藤氏はただ「ゲーム仲間だったから」というだけの理由で高橋氏に声を掛けたわけではない。高橋氏はだたのゲーマーではなく、“ガチ”のゲーマーだったのだ。その腕前は、当時プレイしていたゲームタイトルの世界ランキング1位にまで上り詰めるほど。協力プレイを通じて、コミュニケーション能力の高さもあらかじめ把握できており、まさに齊藤氏が考える入社条件を満たしていたというわけだ。

IT未経験者を戦力にするための教育法とは

 入社後に高橋氏が配属されたのは、情報システム部門で齊藤氏がリーダーを務めていたグループ。まず与えられた仕事は、社内ヘルプデスクに寄せられる日々の問い合わせやトラブルへの対応だ。

 「PCがうまく動かない」「ディスプレイが映らない」――。こうした問い合わせに対応するため、高橋氏はサポートに奔走。その過程で生かされたのが、元来持っていたコミュニケーション能力だった。オンラインゲームにはまっていたとはいえ、家電販売員のバイトなども同時にこなしていた高橋氏。そこで培ったコミュニケーション術を駆使するうちに、次第に社内のさまざまな部署から声を掛けられる存在となった。

 ただしその裏には、齊藤氏による人知れぬバックアップがあった。

 「高橋にはいろんな仕事をお願いしましたが、どれも『1人だけではこなせないギリギリのラインの内容』を選びました。そうすることで、自ずと周囲とのコミュニケーションが発生するようになるんです。また、あらかじめ周囲の人たちにも、『今度こういう新しいメンバーが入ってくるので、どんどん絡んでやってください』とお願いしておきました。こうすることで自然と周囲とのコミュニケーションが芽生え、『仕事というのは1人だけでは成り立たないものなんだな』ということを学んでもらえるようになるのです」(齊藤氏)

 高橋氏の方も、「こうしたバックアップがあったからこそ、どんどん新たな仕事にチャレンジできた」(高橋氏)と当時を振り返る。

 「入社1カ月後には、早くも社内ユーザーアカウントの管理を任されました。当時はまだ『Active Directoryって何?』というくらいの知識レベルでしたから、今から考えるとかなりの“むちゃ振り”だったようにも思えます。でも、ミスしないように必死で調べて、それでもどうしても分からないことがあれば齊藤が教えてくれますし、万が一、トラブルが発生しても周囲がサポートしてくれます。安心して新たな仕事にチャレンジできる雰囲気がありましたね」(高橋氏)

 一方、齊藤氏によると、一見するとむちゃ振りに見えるこうした仕事の振り方にも、緻密な計算があったという。

 「たとえ実務経験が浅くても、責任のある仕事をどんどん振るようにしています。ただし、何も考えずに振るのではなく、メンバー一人一人の現在のスキルレベルや負荷を慎重に見極めて、『その実力値のちょっと上の仕事』をアサインするようにしています。そのために、本人と直接会話するのはもちろんのこと、直接、顔を合わせていなくてもSlackなどのコミュニケーションツールを通じてそれぞれの仕事振りをつぶさにチェックするようにしています。それに、万が一、本人がミスを犯しても、すぐにリカバーできる体制をあらかじめきちんと用意しています。もちろん、本人にはそんなことは一切教えず、『ミスしたらとんでもないことになるぞ!』と言いますけどね(笑)」

Photo クラウドネイティブのslackの中には「何でも書いていいチャンネル」がある。アジャイル開発を勉強中で、日々のタスクをスクラムでこなしているakariさんは、普段の会話の中でもスクラム用語を使うようになった

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