最も簡単で効果が大きいのは、発言する前に名乗ることだ。「田中です。A案について質問があるのですが」「佐藤です。確かにそうだと思います」といった感じだ。これだけでも不思議と電話の向こうの雰囲気が伝わってくる。発言者を特定できるため、発言者の「氷山の下」を想像できるようにもなる。
発言する側にも利点がある。名乗ることで一瞬の間ができ、その間に多少、発言を整理できる。その後に続く発言が端的でクリアになる傾向がある。地味ではあるが、経験上、名乗るのは絶大な効果がある。
電話会議では、相手の方で何が起こっているのかが全然見えない。だから小さな話し声が聞こえたときには無視してもよいのか、拾った方がよいのか迷ってしまう。
そのため、電話会議で議論するときは、いつもの3倍くらい大きな声で、滑舌よく話すように心掛けたい。「小さな声」「こそこそ話」「独り言」は禁止だ。
同じ会議室にいれば聞こえる大きさの声でも、電話の向こうでは聞こえない。一定以上の音量が発生しないと、マイクがオフになる電話会議システムもあるくらいだ。はっきりと大声で、電話の向こう側に話かけるようにしなければならない。
とにかく、いつもの調子で会議ができるとは思わない方がいい。それを忘れてしまうのか、知らないのか、電話会議でもいつも通りのトーンで話す人が非常に多い。電話会議は「普段の3倍、声を張る」と肝に銘じておきたい。
電話会議では、コミュニケーションの非言語要素が使えないので、発言者の意図は言葉から判断するしかない。つまり「言葉」に全てがかかっている。そのため、はっきりと誤解なく話す必要がある。あやふやな表現は許されない。
発言をはっきりさせるのに効果的なのは、コミュニケーションの大原則を押さえることだ。
A)最後まで言い切らせる
B)質問にはストレートに一言で答える
C)何をしようとしているのかを宣言する
この3つを押さえるだけで、途端に発言がクリアになる。少しでも不明確な発言があると、すぐにぐちゃぐちゃした議論になってしまうから、全員でこの3原則を守る。
そして、少しでも曖昧な発言があったら、理解できるまでしつこく問い直す。
「言いたいことは何なのか?」「もう1回、端的に言ってもらえる?」「質問にストレートに答えると、どうなるの?」という感じで、電話会議ではビシビシとツッコミを入れて構わない。
むしろ、そのくらいどんどんツッコミを入れないと、スムーズにコミュニケーションができないと思っておいた方がいい。話し手も、いつもの3倍の声量で、はっきりとストレートに話す。そうやって、電話会議では、不明瞭な発言を徹底的に糾弾することで、ようやくまともな会議ができるようになる。
ちなみに、上記の「コミュニケーションの大原則」のA)については「発言は最後まで言い切れ」、B)については「質問には『ストレート』に『簡潔』に答えよ」でも触れたので、興味があれば参照いただきたい。
最後にポイントをまとめておく。
コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
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