クラウド移行は“やり方次第”でもっとコストを下げられる AWS、5つの支援策とはWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2018年06月04日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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「新たな総合ITベンダー」になりつつあるAWS

 1つ目は、「クラウドの正しい設計概念を提供し、アーキテクチャの最適化を行う」ことである。これに向けてAWSが提供しているフレームワーク「AWS Well-Architected」では、運用性、セキュリティ、信頼性、パフォーマンス、不要なコストの回避といった観点で、顧客と共同でアーキテクチャの最適化を図ることができるという。

 2つ目は、「クラウドのTCO(システムの総保有コスト)における考え方の理解」である。これに向けてAWSが提供しているサービス「AWS Cloud Economics」では、図2のようにAWSのサービスを利用することによって得られる投資効果の算定を支援するという。

Photo 図2 AWSサービスの投資効果

 このサービスがユニークなのは、財務効果だけでなく、計算しづらい非財務効果も対象にしていることだ。これまでの適用実績では、財務効果で30〜80%のコスト削減、非財務効果ではITスタッフの生産性が30〜40%向上。さらに、AWSによる継続的なプライスダウンを加味すると、より高い効果が得られるとしている。

 3つ目は、「社内でクラウドを推進する人材の育成」である。長崎氏は「クラウドというのはテクノロジーだが、ビジネスとも密接に関わっている。ビジネス部門が新しいことをやりたいと言ったときに、それを実現するのがクラウドのテクノロジーだ。その意味では、組織を横断してビジネスとテクノロジーをつなぐ役割を担うCoE(Center of Excellence)チームを設置し、それにふさわしい人材を育成していくのが理想的だ」と話す。

 AWSでは、こうした人材育成に向けたトレーニングの提供や認定制度を設けている。認定制度では、エンジニア向けの資格とともに、特定の専門知識やAWSの各サービスに対する専門知識の認定パートナーも拡充している。図3がその一例だが、こうしたパートナーの認定はユーザーがこれを見て選択しやすいようにするのが狙いだ。ユーザーオリエンテッドのAWSらしい取り組みである。

Photo 図3 特定の専門知識に応じた認定パートナー

 4つ目は、すでに顧客から高い評価を得ているという「サポート」だ。図4がその内容で、4つのプランがある。実際には、大半の顧客が図の右側2つのBusinessかEnterpriseを採用しているという。

Photo 図4 AWSのサポートの内容

 5つ目は、「プロジェクトマネジメント」の支援だ。これは言い換えると、「既存システムのクラウド移行を加速させるプログラム」である。長崎氏は、「ビジネス、人材、ガバナンス、プラットフォーム、セキュリティ、運用といったクラウドを成功に導く6つの視点に基づいて現状の課題を洗い出し、最適なクラウドへの移行を支援する」と語った。

 さて、既存システムのクラウド移行に向けたAWSの5つの支援策を紹介してきたが、これらを聞いて筆者は、AWSが「新たな総合ITベンダー」になりつつあるように感じた。これまでAWSはクラウドベンダーとして、全ての製品・サービスを手掛ける総合ITベンダーとは別な見方をされてきたが、上記の支援策を見れば、これはもうITサービスも全て兼ね備えた総合ITベンダーに匹敵するフィールドの広さだ。ただ、この表現も古いので「新たな」と付けてみたが……。

 言い換えると、アマゾンがあらゆる企業や産業をのみ込むことを意味する「アマゾンエフェクト」という言葉が最近よく使われるようになったが、IT業界もアマゾンエフェクトの脅威が現実味を帯びてきたのかもしれない。今回の取材でそんなAWSの迫力をひしひしと感じた次第である。

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