テクノロジーは人間の能力をどこまで「拡張」できるか――超人スポーツ稲見氏と元アスリート為末氏が語る(5/5 ページ)

» 2018年06月28日 09時00分 公開
[柴田克己ITmedia]
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 例えば、2017年10月にリリースされた「Windows 10 Fall Creators Update」以降では、アイトラッカーデバイスでマウスカーソルを操作できる「視線制御」を標準で搭載している。

 また、同社がiOS向けにリリースしている無料アプリ「Seeing AI」は、デバイスカメラの映像から、テキストや商品名、周囲の状況、人の名前や位置などを読み上げてくれる。AIによる画像認識を視覚障がい者のサポートに生かそうという試みの1つだが、健常者も楽しんで使えるという。

photo 同社がiOS向けにリリースしている無料アプリ「Seeing AI」は、画像認識AIを視覚障がい者のサポートに生かそうという試みの1つだ

 「Microsoftでは、アクセシビリティーについて、各国の調達基準や国際標準に準拠したMicrosoft Accessibility Standard(MAS)という基準を設け、製品開発に適用している。また、障がいのある方をAIでサポートすることを目的に、今後5年間で2500万ドルの投資を行う『AI for Accessibility』という取り組みも発表した。日本では、日本支援技術協会が設立した『Accessibility Developer Community』へ技術情報を提供するほか、トレーニングなどの支援も行っていく。ぜひ、多くの開発者に参加してほしい」(大島氏)

 セッションの最後には、稲見氏と為末氏が再度ステージに登壇し、それぞれエンジニアに向けたメッセージを述べた。

 「歴史の中で、技術は人間の身体感を変えてきた。技術革新によって、農業革命、産業革命といった社会や経済の構造変化が起こった際には、それぞれの産業に従事できない人や新たな道具を使えない人が“障がい者”と規定された。

 つまり、技術にはハンディキャップを埋める力があると同時に、新たなハンディキャップを生み出すという側面もある。今後、情報技術が進化した先に、どんなメリットやデメリットが生まれるのか。その技術が人間の身体感、そして人間が『ヒト』という存在に対して持つイメージにどんな変化が起こるかを見ていきたい」(稲見氏)

 「パラリンピアンと会って感じるのは、一方的にサポートされるだけの人はいないということ。視覚に障がいのある人と、移動に車椅子が必要な人が協力すれば外出もできる。ある状況では助けが必要な人も、環境が変われば人を助けられる。そして、多くの人は『助けられる』よりも『助ける』ことに喜びを感じる。障がいのある人たちが、そうした喜びを多く感じられるようにするには、テクノロジーの助けが必要。エンジニアの皆さんには、そんな技術をこれからも開発してほしい」(為末氏)

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