データサイエンティスト不足に悩んだ「LIFULL」 突破のカギは、機械学習の自動化(2/4 ページ)

» 2018年08月02日 09時00分 公開
[大内孝子ITmedia]
photo AI推進ユニットでデータサイエンティストとして働く椎橋怜史さん。大学の修士課程でデータサイエンスを学び、新卒でLIFULLに入って3年目を迎えたという

 椎橋さん自身も、モデル作成が短くなるよう、さまざまな機械学習のサービスなどを試したが、使い勝手などに難があり、なかなか大きな成果にはつながらなかったという。

 「コードを書ける人からすると『コードがちょっと分かりやすくなった』くらいの変化でしかない。たとえ導入したとしても、売り上げや作業コストには影響しないという程度の差でしかなかったんです」(椎橋さん)

 そんな中、彼らが選んだのは「データ解析の自動化」という方法だ。ユニットの発足後、機械学習のプラットフォーム「DataRobot」を検討し、わずか2カ月で契約。2017年7月には本番環境での稼働が始まった。

LIFULLがDataRobotを選んだワケ

 DataRobotは、機械学習を用いた予測モデルの作成を自動化するソフトウェアだ。ディープラーニングを含む、1000以上の機械学習アルゴリズムやデータ分析手法を実装しており、データを投入すると、その中から適した手法を選び、順次適用していく。アルゴリズムの選択やプログラミング、モデルのチューニングといった作業は必要ない。

 機械学習で何らかの予測モデルを作るまでには、「データ加工(整理)」と「予測モデル作成」という2つのフェーズに大きく分けられる。予測モデルを作成するには、さまざまな手法の中から、使用するデータや得たい結果を踏まえ、最適なものを吟味する。そのため、データサイエンティストのスキルや経験が重要になるのだ。DataRobotはモデルの作成から、実データによる検証までの作業を自動化してくれる。

 林さんや椎橋さんは、AI推進ユニットが立ち上がる前からDataRobotを検討しており、DataRobotの日本法人が設立したタイミングでデモを見に行ったという。

 「DataRobotでは、コーディングをせずとも、非常にレベルの高い予測モデルを次々と当てはめてくれるため、精度が高くなりやすい。人がモデルを選ぶ必要がなくなれば、専門知識がなくても機械学習を扱えるようになります。データに関しても指定のフォーマットにそろえるだけでいい。エンジニアなら容易にできる作業でしょう。データの“素人”が使っても、並のデータサイエンティストくらいの成果が得られると思います」(椎橋さん)

 DataRobotを導入したことで、これまで1〜2カ月かかっていた予測モデルの作成が数日で終わるようになり、現在はライセンスを増やしているところだという。とはいえ、椎橋さんの仕事が楽になったかというと、そういうわけではないそうだ。

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