月間PVが35億に達する無料マンガアプリ大手の「GANMA!」。訪れたユーザーを定着させるため、機械学習を活用したレコメンドモデルをリリースしたとのことだが、それは社内で“たった1人”のデータサイエンティストが作ったのだという。
紙の書籍に代わる形で徐々に一般化しつつある電子書籍だが、その大半が電子コミックによって支えられているのはご存じだろうか。スマートフォンの普及により、マンガを取り巻くビジネスは大きく変わっている。全国出版協会の発表では、2017年のコミック(単行本)市場は電子が紙の売り上げを上回った他、「LINEマンガ」など、無料でマンガが読めるアプリも次々と登場している。
こうしたマンガアプリ(やWebマンガ)は、広告や課金要素といったビジネスモデルを採用しているため、「どのマンガが一番読まれたか」「どこに広告を置けばいいのか」といったデータを日々分析しているのだ。
サスペンス、バトル、ホラー、恋愛など多様なジャンルのオリジナルマンガが読めるマンガアプリ『GANMA!』もそんな無料マンガアプリの一つ。新人漫画家の育成、輩出なども手掛けており、160以上のオリジナルマンガを掲載している。しかし、そんな巨大コンテンツメディアにも、集客の悩みがあったという。
「CMなどの広告を使って新規登録が増えても、それだけ離脱が増えてしまえば、投資対効果は下がります。“バケツの穴”をふさぎ、ユーザーをどう定着させるのかが課題になっていました」
こう話すのは、GANMA!を運営するコミックスマートのデータアナリスト、大藪真之祐さんだ。データ分析担当として2017年に入社し、さまざまなデータを可視化する中で、ユーザーの継続率が下がると、売り上げなどの指標にも影響が出ることを突き止めたという。
「当時のKPIはPVが中心で、継続率や併読数(1ユーザーが何作品を読んだか)といった指標は注目されていませんでした。そこで機械学習を使い、離脱してしまうユーザーを予測できないかと考えたのです」(大藪さん)
大藪さんたちが、さまざまな機械学習関連ツールを探す中で注目したのは、機械学習の自動化ツールである「DataRobot」だった。上司がイベントでCEOのJeremy Achin氏が行った講演を聞いたことで名前を知り、販売代理店だったトランスコスモスを通じて導入の検討を行ったそうだ。
DataRobotを交えて打ち合わせを行ったのは2017年の秋ごろ。「ユーザーの離脱予測をしたい」と大藪さんが相談したところ、返ってきたのは「離脱予測よりも、継続率を高めるレコメンドモデルを開発してはどうか」という提案だった。
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