マンガアプリ「GANMA!」のAI導入、たった1人のデータサイエンティストが2カ月で実装できたワケ【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(3/4 ページ)

» 2018年12月17日 08時00分 公開
[柴佑佳ITmedia]

 「普通なら何日もかかるようなクエリが30分くらいで完了しました。スプレッドシートなど、他のGoogle製品との親和性も高く、何より安い。あと、BigQueryとスプレッドシートを連携させることで、レポーティングを自動化できたのも大きかったですね。データをペタペタ貼って2次加工する工数って、地味にきついものがありますから」(大藪さん)

 作ったデータマートは、トランスコスモスが所持しているDataRobotの環境で試すこともできたそうだ。およそ2カ月間の試行錯誤の末にデータマートが完成し、その後、ようやくDataRobotとの契約を結び、2018年4月から利用を開始。数回のレビューを経て、5月下旬にレコメンドモデルが動き始めた。

photo 新レコメンドシステムのアーキテクチャ

レコメンドのクリック率が7倍に

 新たなモデルに切り替えてから2週間後に効果測定を行ったところ、継続率(最初のアクセスから、7〜13日の間に再訪したユーザーの割合)は1ポイント上昇し、レコメンドした作品を読んでくれたユーザーの割合(CTR)については、なんと7倍になったという。大藪さんによれば、「最も安価なプランを選んでいても、DataRobotの導入費用は決して安くはなかった」とのことだが、継続率やレコメンドに対するCTRの向上によるインパクトは、期待を大きく上回るものだった。

 「アプリ画面の上部に表示されている(=見つけられやすい)ことと、見つかった後に『読まれやすいか』というのは別です。例えば、とあるジャンルでニッチな作品を読んでいる人には、他のジャンルでもニッチなものをDataRobotが選んでくれます」(大藪さん)

photo 新レコメンドモデルリリースまでのスケジュール

 GANMA!はアプリの設定上、完結済みの作品はどうしても表示位置が下の方になってしまうという。そのような「見つけにくい」完結済みの作品を読みたいユーザーにとって、新たなレコメンドモデルは確度の高い水先案内人になるだろう。

 DataRobotやトランスコスモスのサポートがあったものの、コミックスマート内でのデータ分析担当は大藪さん一人だけであり、DataRobotの導入も基本的に一人で進めたという。それでも、導入後2カ月で新モデルのリリースまでこぎ着けられたのは、大藪さんが、データサイエンティストであると同時に「システムエンジニア」だったというキャリアによるところも大きい。

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