データサイエンティストというのは、データを分析し、精度の高いモデルを作ることだけが仕事ではない。ビジネスにおけるデータ分析というのは、データ収集や、分析した結果をしかるべき場所で報告するといった要素に加え、作成したモデルをテストしたり、その仕組みを自動化するといった“エンジニア的”な作業も多分に含まれる。
前職でシステム開発の経験を積んでいた大藪さんは、自動化のノウハウを持っていた。このような「システム開発経験を持つデータサイエンティスト」という人材は意外と少ないのだという。エンジニアのスキルをベースとしているか、統計学などアカデミックなスキルをベースとしているか、そのどちらかが多いのだそうだ。
「プログラムは、さまざまな繰り返し作業を自動化してくれる手段です。データ分析は“繰り返し“がとても多い。そのため、プログラミングのスキルがあるかどうかで、試行錯誤の回数が変わってくると思います」(大藪さん)
実際に本契約を行う前から、大藪さんはDataRobot APIを駆使してさまざまなテストを進めていたという。これも実装がスムーズに進んだ要因の一つといえるだろう。
コミックスマートでは今後、社内でDataRobotを利用する人をさらに増やしていきたいと考えているという。
「各マンガの編集担当も日頃からGoogle Analyticsなどを見ており、データに親しんでいます。そのデータを加工して活用していく点が次の課題になるかもしれません。編集者にもデータ分析に興味がある人はいるため、彼らにアプローチしてDataRobotを使ってもらえればと。やはり、たった1人ではリソースが全然足りないです」(大藪さん)
また、PVやユーザー数、売り上げの予測から、ユーザー登録をしていない人でも、読んでいる作品からユーザーの嗜好や属性を類推し、より効果のある広告を掲載するような仕組みも考えているそうだ。
関係者が目的意識を共有し、ツールの導入前に情報整理を済ませておいたこと、当事者がデータや自社システムに深い造詣を持っていたことなど、コミックスマートの事例には、AI導入に成功するための象徴的なヒントが詰まっている。
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