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» 2018年08月07日 07時00分 公開

希望と課題が山積み?:全国の不動産情報をブロックチェーンで共有へ――前代未聞のプロジェクトが動き出した理由 (2/2)

[高木理紗,ITmedia]
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ブロックチェーンをどう使いこなすのか?

 不動産分野へのブロックチェーン活用には、メリットだけでなく課題もある。例えば「現時点での住人情報」といった個人情報を共有したい場合は、どうするのか。

 「ブロックチェーンの場合、一度加えた情報は決して削除できない。そのため個人情報をそのまま載せるのは難しい。GDPR(欧州一般データ保護規則)のように、企業に提供した個人情報をユーザーが削除させる権利が当たり前になっていく可能性があるからだ。こうした課題の解決法は、今後技術面から見つける必要があるだろう」(セウェカリ氏)

 また、LIFULLの松坂維大氏は、「自分の個人情報を複数の企業に共有されることに抵抗を覚える人もいるだろう。その辺りは、顧客の反応を慎重に見て判断したい」と語った。

 桜井氏は、「今後のニーズや運用次第で、ブロックチェーン以外のテクノロジーを使う可能性はある。今回は、ニーズに合うテクノロジーという意味でブロックチェーンが選ばれただけ」と話し、目的に合わせて柔軟なテクノロジー選定を進める姿勢を示した。

不動産関係者から漏れた“期待”と懸念”の行方は

 同プロジェクトには、技術以外の課題もある。例えば、傘下企業で作る不動産情報コンソーシアム(仮称)は、有識者などの個人や自治体は無料で加入できるが、企業の場合、年間100万円の参加費を仮で想定している。

photo 不動産コンソーシアム(仮称)の企業、自治体、個人それぞれの負担額(仮)について記したプラン

 会場に集まった不動産企業の関係者からは「(今まで資産として情報を集めてきた)企業にとってデータの出し損にならないか」「将来、どうやってマネタイズするのか」という指摘や質問が飛んだ。

 桜井氏は、「今後の商用化に当たっては、情報利用者への課金を検討している。今の段階から参加している企業にはポイントを配布するなど、データベースを作る際の貢献度も考慮して、集めたお金の配分方法を議論している。さまざまな課題があるのは承知しているが、新たな価値を生み出すために積極的な挑戦を続けていく」と話した。

 参加企業は、こうした点についてどう思っているのか。

photo ゼンリンの高木和之氏

 ゼンリンから参加した高木和之氏は「1社では実現できないペースや規模でデータベースの成長を見込める意味で、(同プラットフォームには)期待している。確かに、各社が今までそれなりのコストと手間をかけて情報を集めてきたからこそ、情報がわれわれの資産になっているのは事実だ。ただし、正確な情報の共有を進めれば進めるほど、データとしての価値は増していくはず」と語った。

 全保連の中村氏は、「不動産業界は、もともと横断型の事業が少なかった。全保連もそうだが、これまで1回のサービスで顧客との接点が途切れてしまっていた企業にとって、顧客にさらなる価値を提供できるような企業同士のつながりを深めていくきっかけになるのでは」と話した。

 「不動産」「地図」といった分野は、幅広い消費者に影響を及ぼす。今回の事業がもし全国的に成功すれば、そのインパクトは大きいはずだ。そうした意味で、今後の具体的な組織化や技術選定、商用化に向けた動きは注目に値するだろう。

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