――志路さんと見極さん、なぜあんなに荷物を持って来たのだろう。見極さんはなぜミリタリーな服を着ているんだろう。この夏の盛りに暑くないのかしら。(深淵)大武に到っては長い筒のような物も持って、やたらポケットが多い服を着ている。この人たち、何をするつもりかしら。
メイは不安になって聞いてみた。
「見極さん、大荷物ですね。何が入っているんですか?」
「PCや、それに付随するもの一式だ。どこで何があるか分からないからな」
「同感だ」
志路も同じく、にやりとしながらバッグを開けてPCを見せた。
「でも、代わりの人が会社にいますよね」
「気持ちの問題だ。それに、いざとなればここを対策本部にすればいい」
――まぁ、そうなんですけど。ここに来た時くらい楽しんだら? とメイは思った。
タクシーがまた、着いた。山賀と大山らしき女の人が降りた。
「大山です。遅れてすみません。よろしくお願いしまーす」
「いーや、皆来たばかりだよ?」
大河内が声を掛ける。
「それじゃ、始めましょうか。まだ早いから、最初は自由行動。13時に集合かしらね」
山賀が言うと、それぞれが「ふぁ――い」と抜けた返事をした。
「あたし、海行きたーい。更衣室はどこ? 潤、いこ!」
「更衣室は、今、サーファーのお姉ちゃんが出て来たところ」
大河内が応える。
屋外のシャワー施設の隣にある部屋から、髪を縛った黒ビキニのサーファーが出て来た。
部屋が空くと同時につたえは更衣室に飛び込んだ。
「もう、あの子、気が早いわねー」
メイが呟く。
先に潤が出て来て、つたえを待っている。
しばらくして、つたえが出て来た。フレアトップの花柄の水着だ。
潤、つたえが待ちきれないようにビーチに降りていった。
「あらあらあら。若いっていいわねー」
山賀が言う。
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