同調査では、AIやRPAの活用状況についても聞いている。
AIについては、図3に示すように「本格的に活用済み」が7.9%、「テストまたは部分活用済み」が18.5%で、これらを合わせると26.4%となる。これもデジタル革新と同様で、本格活用の段階に至っている企業はまだ少ないものの、準備中や検討中の段階まで含めれば5割を超えてくる。
RPAについては、図4に示すように「本格的に活用済み」が6.1%、「テストまたは部分活用済み」が15.6%。検討中という企業まで含めれば43.5%に達する。
なお、AIやRPAの活用については、業種別では金融業が先行しており、企業規模別では大手企業の方が高い傾向がある。とはいえ、規模が小さくなっても活用率は20%前後を保っていることから、規模にかかわらず活用が進んでいるともいえそうだ。
こうしたMM総研の調査結果を見ると、デジタル革新を進める国内企業において、AIやRPAの活用が今後広がるのは間違いなさそうだ。そこで訴えたいのは「AIやRPAの活用が、他社との差別化にどうつながるのかを考えてほしい」ということだ。
AIについてはそういった動きも見られるようになってきたが、一言申し上げておくと、ここにきて機械学習をはじめ、現時点で企業が活用できそうな技術が明確になってきた印象がある。
それらによって、自社のコアビジネス(あるいは新規ビジネス)をどう差別化できるかを考えるのは簡単なことではない。誰にでも手に入るようなデータを使ってAIを作ったところで、他社との差別化にはなり得ないからだ。自社が独自に持っているデータをどうビジネス価値に変えていくか。企業は自らの発想と行動で、果敢に挑戦していくべきである。
一方のRPAについては、「差別化の手だてになるのか」と思う人も少なくないかもしれない。少なくとも、業務の品質や生産性を向上させる上では頼もしい支援ツールになるのは確かだが、最近では、バックオフィス業務だけでなく、営業などのフロントオフィス業務にも、RPAを適用できる範囲が広がってきている。
そこで言いたいのは「フロントオフィス業務における“気づかい”や“心づかい”といったものは、日本企業の得意とするところではないか」ということだ。RPAとAIは相性がいいため、今後は、フロントオフィス業務における勘と経験がAI化することで、いわゆる日本の「おもてなし」の真骨頂を発揮できるのではないか。
以上、日頃の取材で感じていることを述べたが、改めて「企業はAIとRPAで差別化戦略を描け」と、微力ながらエールをお送りしたい。
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