良いものをそろえれば、結果は後からついてくる ――成城石井 執行役員 早藤正史氏長谷川秀樹のIT酒場放浪記(1/3 ページ)

こだわりの品ぞろえにファンも多いスーパーマーケット成城石井を率いる執行役員の早藤正史氏。そのユニークな商品展開や経営路線の根底にある早藤氏の経営哲学やリーダー論とは。

» 2018年09月21日 13時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
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この記事は、「HANDS LAB BLOG(ハンズラボブログ)」の「長谷川秀樹のIT酒場放浪記」に2016年3月2日に掲載された記事を転載、編集しています。


 ハンズラボCEOの長谷川秀樹が、エンタープライズ系エンジニアが元気に働ける方法を探し、業界のさまざまな人と酒を酌み交わしながら語り合う本対談。

 今回のゲストは、こだわりの品ぞろえにファンも多いスーパーマーケット成城石井 執行役員の早藤正史氏(執行役員/店舗運営本部本部長/店舗運営部部長 店舗開発部、物流戦略部、ネット事業担当)です。成城石井のユニークさの根本にある哲学や東急ハンズとの共通点など、思わず成城石井で買い物がしたくなるお話が満載です。

こだわりのある会社で仕事がしたかった

長谷川: 早藤さんは転職ではなく、最初から成城石井に入社されたんですか?

早藤: そうです。'97年入社です。出身は滋賀県なんですが、大学で東京に来たら帰りたくなくなったというか、せっかくなら東京がいいなと、東京近郊にしかない会社を探しました。

長谷川: もともと小売業を希望して?

早藤: いえ全然。すごい氷河期だったので、どこか決まるところでいいと。でも、やっぱり何かこだわりのあるところで働きたいという思いはあって、食が好きだったので成城石井に行ってみたら、「いいな」と感じたんですね。

Photo 成城石井 執行役員 早藤正史氏

長谷川: 入った時に希望の部署はあったんですか? 小売業の花形というとバイヤーですかね。

早藤: 僕は店長になりたいと思ってたんです。世界各国に行くバイヤーも面白そうでしたけど。

長谷川: そうですよね。フランスに行ってワインやチーズを買い付けしたりとか。

早藤: ワインはいいな、と思いましたけど、実はチーズが苦手だったんですよ。入社して成城石井の成城店に配属になったのですが、チーズを切る仕事があったんですよね。チーズ室というのがあって、そこに入った瞬間「この匂いは無理!」と(笑) 上司にも「これは無理です」と言ったくらいで。

長谷川: へぇ、僕はフランス料理店でバイトしていたことがあって、そのときにチーズっておいしいと思いましたけどね。

早藤: 今は慣れて、おいしいと思いますけどね。文化というか、食べ慣れるとおいしい、飲み慣れるとおいしい、というものはありますよね。

長谷川: 御社は店ごとに、各部門のチーフがいるという形ですか。

早藤: 店舗の大きさにもよりますが、基本的にはそうですね。店ごとにチーズのチーフがいたりして。

長谷川: 早藤さんが好きなカテゴリーというのは?

早藤: 僕はやっぱりお酒と、お酒にまつわるものが好きですね。入社してから勉強して、いろいろ知るにつれて、ワインておいしいなと思うようになりまして、お酒の部門のチーフになりたいと思っていました。でも叶わず。店長の時に、一度兼務でやりましたけどね。

優秀な人は“人心を集める人”

長谷川: 43歳という年齢と役職からすると、早藤さんはプロパー社員ではぶっちぎりで出世したパターンじゃないですか?

早藤: いえいえ、プロパーといったら、社長がプロパーですから。 彼は42歳で社長になりました。

長谷川: 社長はおいくつ?

早藤: 今48歳です。

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長谷川: なるほど。でも、今43歳でこの役職というのは他にいないわけですよね。御社で伸びるというか、優秀だと見なされるのは、どんなスキルを持ってどんな行いをする人なんですか?

早藤: 難しいですけど、上にあがる人って、多くの人をマネージしていく立場になるので、「人心を集める人」ですよね。人が動いてくれるかどうか、ということにつながるので。

 小売業だと特に、お店の店長1人が直接数字を作ることはできなくて、働きやすい雰囲気を作るのが重要なんですね。お店のみんなのやる気とか仲がいい、悪いといったことを、お客さまは感じると思うんですよ。そういう、見えないけど重要なことって、けっこうあるんじゃないかなと。

長谷川: なるほど。

 東急ハンズの場合、役職者になりたくない人ってけっこういるんですよね。部下を管理するよりも、好きな商品を売っていたいというタイプ。役職があがって現場から離れていくとなると、「たとえ給料上がったって、そんなん俺の人生じゃない」みたいなことを言う人がわりといるんです。

早藤: あ、いますいます! そういう人は重要ですよね。お客さまをつかめるのはそういう人で、そういう人が頑張る環境を作るのが大事かな、と。

 東急ハンズさんもそうですが、売っているのが特徴ある商品で、ただ置いておいたら売れるというものわけではないので、伝道者というか、伝える役割の人が必要な部分が多いので。

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