10年後、銀行は存在しているのか デジタル金融の行方Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2018年10月22日 14時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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10年後の銀行の姿とは

 では、銀行のDXが進展すると、ビジネスはどのように広がっていくのか。隈本氏によると、2つの方向がある。1つは海外など市場の拡大、もう1つはビジネスモデルの拡張だ。そして、それらに求められるICTとして、前者は「事業内容・規模の変化に対応できる柔軟かつスケーラブルなICT」、後者は「感度の高い顧客層に訴求可能な先進的・特徴的なサービスの実現」が挙げられるという。

 それらを踏まえて、富士通が「デジタル時代の金融サービス」として描いたのが、図4である。先ほどの前者のICTは「素早いサービス投入」「安心・安全」などをポイントにバックエンドへ適用され、後者のICTは「外部と簡単につながる」「感動的なユーザー体験」をポイントにフロントエンドへ適用される形となる。

Photo 図4 デジタル時代の金融サービス

 隈本氏に続いて説明に立った富士通の坂本真司 第一金融ビジネス本部長代理は、隈本氏の話を踏まえたうえで、10年後の銀行の姿を図5のように描いた。メガバンクとネットバンクは「バックエンド特化型銀行」および「生活・事業浸透型銀行」として、地銀が担う「フロント/領域特化型銀行」や「X-tech」「異業種」にも銀行機能を提供するといった構図だ。この図は他と比べてシンプルだが、示唆に富んだ内容である。

Photo 図5 10年後の銀行の姿

 これに対し、坂本氏は富士通の今後の金融ビジネスとして、これまでのように顧客の要望に応じるだけでなく、富士通からも新たな提案をどんどん行って顧客とビジネスを共創。さらには富士通自身も新たな金融サービスを展開できるようにしていく考えを示した。

 図6は、富士通のデジタル金融向けのソリューション体系を表したものである。4つのドメインからなり、中でもデジタルバンキングそのもののソリューションとなるのが、現在ソニー銀行と開発を進めている「FUJITSU Banking as a Service」、略して「FBaaS」(エフバース)である。

Photo 図6 富士通のデジタル金融向けのソリューション体系

 10年後の銀行の姿という説明があったので、会見の質疑応答で「20年後は、もはや現在の銀行の姿は跡形もなくなっているのではないか」と、あえて聞いてみた。すると、隈本氏も坂本氏も異口同音に、「姿形は大きく変わるだろうが、20年後でも全くなくなってしまうことはなく、メガバンクやネットバンクは10年後と同様、銀行機能を提供するプラットフォーマーとして社会的役割を担っているだろう」との答えだった。

 もちろん、現実的には法制度もあるので銀行が消滅することはないが、そうした規制も時代とともに変わっていくだろう。銀行が変われば他の産業にも大きな影響を及ぼすのは間違いない。その意味でも大いに注目したい。

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