3年後には138万時間分を自動化、1200トンの紙を削減 あいおいニッセイ同和損保のRPA導入、その勝算は?業務を単に自動化するなら、やらない方がマシ(1/2 ページ)

「紙の作業が多い」といわれる損保業界。その中で、あいおいニッセイ同和損保が思い切ったRPA導入と業務改革に乗り出した。業務フローを根本から見直し、あくまで“内製”で進めるというその内容とは一体何か。

» 2018年11月07日 07時00分 公開
[高木理紗ITmedia]
photo あいおいニッセイ同和損害保険の黒田正実副社長

 企業向けITの話題に、「働き方改革」や「生産性向上」といった言葉が頻繁に登場するようになって久しい。事務作業のペーパーレス化やコミュニケーションツールの導入といった事例が出てくる一方、「単に作業の場を紙からデジタルに移しただけで、業務そのものは変わっていない」というケースもある。

 そんな中、国内有数の規模を持つ損害保険企業、あいおいニッセイ同和損害保険(以下、あいおいニッセイ同和損保)では、「既存の業務をデジタル化するのではなく、デジタル化に合わせて業務自体を見直したい」という姿勢でRPAの導入を進めている。

 顧客や支店、本店との間で複雑な事務手続きが必要な損害保険業界は、紙をベースにした作業が多い。同社も例外ではなかった。

 「例えば、保険料を清算する業務の場合、従来はそれぞれの営業店で作成した書類を本店に郵送し、本社の経理部で内容を確認してからシステムに入力していました。書類の誤りが見つかることが多く、そのたびに営業店との間でやりとりが発生するなど、負担が大きい点が課題でした」と、同社副社長の黒田正実さんは語る。

photo 従来の保険料清算業務の様子。書類の不備を本社から営業店に照会する業務が大きな負荷になっていたという(画像提供:あいおいニッセイ同和損害保険)

 同社では、周囲の企業が次々と業務をデジタル化し、ビジネスそのものを変えていく状況に直面したことで、「負担の多い今の業務をITで根本から変えなければ、損保業界も新しい勢力にあっという間に負けてしまうだろう」と危機感を抱いたという。

 そこで2016年、業務の見直しとIT導入の推進を全社で決断し、2017年からITツールの本格的なPoCを開始。その一環として、2018年にMicrosoftのCRMおよびERP統合型プラットフォーム「Dynamics 365」と、同製品と連携して動くUiPathのRPAを導入し、アビームコンサルティングやシーイーシーといった企業の協力の下で、本格的な実装を進めている。

 「新しい技術の導入をSIerに任せて業務の一部を変えるのではなく、社内に専門のチームを置き、各部門の業務の見直しや改善、RPAを導入する業務の選択をじっくり進めています」と、実際に同社でRPA導入に関わる佐古田有宏さんは語る。

 例えば、前出の経理部では、従来営業店で人が行っていた入金や債権などの情報をロボットが入力する方式に変え、本社側からDynamics 365を通して直接確認できるようにした。その結果、紙からシステムへの入力といった作業がなくなっただけでなく、内容の誤りも減り、およそ4万時間分もの作業時間を削減したという。

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