Chat Co-Robotは、人とロボットがコラボレーションして業務を行うことができる“デジタル基盤”だ。チャットを通じて、顧客、行員、ロボット、エコシステムプレーヤー間での会話によって業務を組み立てていくイメージである。
また、全ての顧客と行員が行う操作履歴をAIエンジンで分析して、チャットbotをさらに高度化させることができ、ロボットが人に次にやるべきタスクなどを提示することも可能。ロボットとの会話を前提に業務をゼロベースで組み立てているため、エンド・ツー・エンドでデジタル化が可能になり、事務作業の70〜80%を削減できるとしている。
伊予銀行とアクセンチュアはこのChat Co-Robotをベースに、店舗戦略やアプリバンク戦略への布石となる取り組みの1つとして、店舗タブレット「Agent」を共同開発し、2018年10月よりサービスを開始した。この共同開発は2017年5月からスタートしており、今回のサービス開始を機に両社で新たに3年契約を結んだ格好だ。
Agentの特長としては、「顧客を待たせない(例えば、口座開設は6分で完了)」「既存業務プロセス・ルールをゼロから見直すため、事務作業を大幅に削減」「店舗のレイアウト・スペースが変わる(待合室形式から、仕切りのないラウンジ型へ)」「店舗の役割が変わる(事務中心の場から、相談・地域コミュニティーとつながる場へ)」「タブレットを持ち出すことで“どこでも銀行”を実現」などが挙げられる。
今後、伊予銀行のデジタル変革プロジェクトでは、図2に示すように、Agentを皮切りに住宅ローン、カードローン、アプリバンクと拡大するとともに、店舗ネットワークの見直しや次世代店舗のデザイン・移行など各種プログラムをアクセンチュアとともに順次実行していく計画。それぞれのプログラムが連携し、全体として銀行を変革し、2020年度のDHDバンク完成を目指す構えだ。
以上が、伊予銀行がアクセンチュアとともに進めているデジタル変革プロジェクトの概要だが、気になる点が2つある。
1つは、投資規模だ。会見の質疑応答で聞いてみたところ、竹内氏は「Agentについては事務職の行員およそ150人分の報酬に相当するが、1年で回収できる見込みだ」と答えた。もう1つは、その竹内氏の言葉を受けていうと、削減対象となる150人の行員はどうなるのかだ。この点について同氏は、「人的なリストラは考えていない。対象となる行員については、お客さまに対応する仕事へスキルシフトできるように取り組んでいく」との見解を示した。
そして、伊予銀行とアクセンチュアは最後に、「DHDバンクのコンセプトとChat Co-Robotプラットフォームにより、日本中の地銀における共通の課題を解決する一助になりたい」との思いを語った。これは、「地銀のデジタル基盤」を確立して全国へ広げていきたいとの考えを示したものだ。そのためにもまずは伊予銀行自体の取り組みが注目される。果たして、デジタル変革に向けた“共創”は奏効するか、両社の動きを引き続き注視しておきたい。
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