紙の帳票にシステム入力……多重業務だった経費精算を自動化したアサヒグループ 目指す“新たな出張のかたち”とは?2万時間の削減を目指す(1/2 ページ)

アサヒグループでは、交通費の入力、伝票の提出など、業務の工数が多い経費精算業務を自動化しようとしている。予算をゼロから見直す「ゼロベース予算」の取り組みから始まった自動化は、どれほどの効果を生もうとしているのか。

» 2018年12月07日 08時00分 公開
[高木理紗ITmedia]

 日本ではおなじみのビール「アサヒスーパードライ」を生産、販売するアサヒビールや、アサヒグループ食品などを傘下に抱えるアサヒグループホールディングス(以下、アサヒグループ)。日本国外への展開を加速する同グループは、ここ10年で海外での売り上げを伸ばし、全世界で3万人を超える従業員のうち、半分以上は日本国外で活躍している。

 アサヒグループでは最近、一部だけでなく全体を見直し、各業務にかけていた費用をゼロから見直す、いわゆる「ゼロベース予算」の業務改革に取り組んでいる。その一環として、グループ各社の財務や総務、情報システムなどを一手に担うアサヒプロマネジメントでは、交通費などの経費精算プロセス刷新に動き出した。これまで社内で見過ごされがちだった「一つ一つは地味で小規模だが、降り積もれば大きな負担になっていた」という業務や予算をあぶり出し、削減しようとしている。

会計システムの入力以外に紙伝票の処理まで……多重化していた業務を見直し

photo アサヒプロマネジメント 業務システム部の川内浩副部長「自動化にはまだ課題もあるが、徐々にグループ各社に広めていきたい」

 大規模な企業を複数抱えるグループで、一見“地味”ともとれる経費精算業務は、なぜ見直しの対象になったのか。

 アサヒプロマネジメントでグループ各社の業務システムの管理や統括に当たる川内浩さんは、「これまで社内で見直していなかった部分を探した結果、出てきたのが経費精算でした。通常、それぞれの会社の決算書で金額の大きい業務が見直しの対象になりがちです。しかし、経費精算のコストを見直すと、それぞれの会社単位では小さな金額に見えても、グループ全体では意外に大きいことが分かったのです」と語る。

 従来、グループ各社では、社員が経費精算に費やすプロセスが非常に多く、かつ複雑になっていたという。

 「例えば社員が出張する場合、自分で飛行機のチケットやホテルなどを手配した上で費用を立て替え、その詳細を自分の手で勤怠システムと会計システムの両方に入力する必要がありました。それとは別に、取っておいた領収書を帳票処理して上司に提出し、承認印をもらう必要があり、社員と上司、双方にとって手間が多い状況でした。

 また、精算のやり方自体も、グループ各社で違っていたため、会社間で異動した社員は、異動先で精算のプロセスをゼロから覚え直さなければならない状況でした」(川内さん)

photo グループ各社で行われている経費精算業務と自動化後を比べた図(提供:アサヒプロマネジメント)

 同社では、今まで経費についてデータをほとんど蓄積できない状態だったため、経費精算のプロセスを見直すことで得られる効果も明確に分かる状態ではなかったという。しかし、「出張などの手配から経費の精算まで一気通貫で自動化すれば、データが蓄積されることで、むしろこれから削減できる部分も明らかになる」と考え、自動化を決断。展開先の海外でも使えるソリューションを探した結果、クラウドで動く経費精算ツール「Concur Expense」および出張手配ツール「Concur Travel」を2018年1月にアサヒプロマネジメントで導入した。

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