小学校のプログラミング授業に潜入 自在にコードを操る子どもたちに驚いた(2/2 ページ)

» 2018年12月14日 08時00分 公開
[高木理紗ITmedia]
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 竹早小学校でプログラミング教育を研究し、今回の授業に同校から参加を決めた佐藤正範教諭は、「プログラムの内容がその場で音や光になって現れるような教材だと、やはり子どもたちの食いつきが違いますね。今回のプロジェクトの話が来たときは、今後に向けて教材の選択肢を広げる機会だと思い、すぐに参加を決めました」と語る。

 とはいえ、佐藤教諭によれば、プログラミングを活用する授業授業が必修化し、こうした内容の授業を小学校が定期的に行うのは、決して簡単とはいえない。政府が2017年に発表した新学習指導要領では、教科の中でプログラミング的思考を育成するよう定められ、「算数」「理科」「総合」などを中心にプログラミングを活用した授業が例示されているが、「各教科のように学問体系があるものではないため、先生方は新しい内容に戸惑っている状況であるようです」(佐藤教諭)。

 「(竹早小学校のような)国立の小学校の場合は、各教員の専門領域があり、私であれば『情報』担当として、研究のための時間がある程度使えます。そのため、公立の小学校に比べれば、まだ授業の内容を組み立てる苦労が比較的少ないのではと感じています。今は、さまざまな学年の授業でできることを試していますね。

 教員が1年間の授業に使える時間数は限られています。公立小学校のように、各教科の時数が厳密に決められている中で、時間数を増やさず、他教科で教える内容を減らさずにさらにプログラミング的思考を追加で教えるのは、相当大変なのではないでしょうか」(佐藤教諭)

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積み木や図工のように、プログラムを組む子どもたち

 取材の最後に「良かったら見ていきませんか」と言う佐藤教諭に案内されて、記者は数分間、小学校3年生の国語「くらしと絵文字」の授業にお邪魔した。

 教室に足を踏み入れるなり、記者の視界に飛び込んできたのは、めいめいの机いっぱいに収まるノートPCに次々とコードを打ち込み、プログラムで絵を描いている子どもたちだ。そのうち数人は、机から立ち上がって「先生、できたよ!」と、自分たちが作った絵文字やサインを見せにきた。

 キーボードを速いスピードでたたく子どもたちの目は、真剣そのものだ。子どもたちが夢中で粘土をこねるように、それぞれのプログラムで楽しそうに試行錯誤する様子は、まるで図工の授業を見ているようだった。後ろに貼られた模造紙には、「スマホ」「PC」など、私たちが普段身の回りで使う電子機器が描かれていた。わくわくした子どもたちの表情を見ていると、記者の大人たちでも同じ授業を受けてみたいと思わされる。

 「子どもたちには、『入力』と『出力』を自然に学んでほしいと考えています。自分がプログラムを組んだ結果が、絵や光など、何らかの動きになって出てくる、という関係性ですね。そうすれば、生活を取り巻くあらゆる機械が、そうした入力と出力の仕組みを使って動いていることに、子どもたちはおのずと気付いていくでしょう」(佐藤教諭)

 家庭や企業、交通機関など、あらゆる場所でITが不可欠になったことで、将来を担う子どもへの教育の内容は大きく変わろうとしている。今教室でプログラミングに取り組む子どもたちは、10年後、どんな人材に育つのだろうか。

注:佐藤教諭の発言内容や小学校3年生の授業内容について、一部加筆し、修正しました。(2018年12月14日:編集部)



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