下請かけこみ寺の過去の対応事例から、中小企業は下請け取引のどんなところに悩み、どう対応しているのか、具体的に見てみよう。平成29年度の『下請かけこみ寺活用事例集』から1例を紹介する。
問題: コンテンツ取引における発注書の不交付
相談内容:
番組の制作会社A社(資本金100万円)は、B社(資本金3000万円)からテレビ番組の制作委託を受けて番組制作を行っているが、発注書の交付がなく、口頭発注となっている。番組の詳細な内容・制作金額・納期も定まっていない状況である。また制作にあたり、B社から追加・手直しなどが多く、音入れが伸びている状況である。現状を改善するには、どのように対応すればいいか。
対応: 発注書の必要性(書面交付義務)を訴求
下請かけこみ寺からのアドバイス:
下請かけこみ寺では、本相談案件を、資本金区分と委託内容(情報成果物の作成委託)から、下請代金法に該当する取引と判断。
本来、制作委託をするには発注書が必要で、この場合、B社に作成・提出の義務がある。
発注担当者(B社)が下請代金法に精通していないことも考えられるとみて、公正取引委員会の下請法に関するWebサイトから下請代金法のコンテンツ取引についてのパンフレットを出力して、パンフレットを提示しながら発注担当者に対し、発注書の発行を依頼してみることを提案した。
また、不当な給付内容の変更・やり直しの禁止事項に抵触する可能性もあるため、下請代金法の話をしても改善がなければ、公正取引委員会に相談してみてはどうかとアドバイスした。
残念ながら、発注書の必要性を把握していない発注者も存在するようだ。発注書の作成を強要するとうるさがられるケースがあるようだが、下請としてはなかなか指摘するのが難しい。そんなときには、この例のように、公正取引委員会の下請法に関するWebサイトから必要な情報を提示するなどして、発注書の交付が義務であることを伝える方法もあるのだ。
なお、この例で紹介されているコンテンツ取引における発注書面の交付義務や、禁止事項、対応例(指導事例)については、下記のガイドブック『コンテンツ取引と下請法』に該当する記載がある。
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