「ごみデータ」を入れれば「ごみ」が出てくるだけ――変化の時代に勝つためのデータ活用、IT部門はどう関わればいい?CIOへの道【フジテックCIO 友岡氏×クックパッド情シス部長 中野氏スペシャル対談】(2/5 ページ)

» 2018年12月29日 07時00分 公開
[後藤祥子ITmedia]

データの精度を上げるためにすべきこと

中野氏: ちなみに、システムは情シスが統括して見ているのですか? それとも部門に散っていたりします?

友岡氏: もともと、さまざまな部門に分散していた仕組みを、段階的に情シス部門に集めていますね。

 まず、サーバを情シスが管理しているデータセンターに集めるような物理統合からスタートして、次は「論理的にどう統合するか」に進みましたね。論理的に統合するところはものすごくハードルが高くて、そこにコードの問題やマスターの問題、アプリ連携の問題があります。

 現実的には、コード標準化のところはちょっと目をつぶりながら(笑)、まずは集計するときにコード変換しながら最速でデータを集める、各アプリのコードの標準化は古いアプリが順番になくなるところまで時間をかけて徐々に合わせていく――というスタンスが、フジテックでは現実的だと思っています。現場実務はローカルコードでしっかり回っているので。

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中野氏: ロジスティック系のシステムは、事故を起こすと生産販売の全てが止まってしまうから気を抜けないですよね。人事や会計のシステムなら、仮に事故が起こっても、「決算に間に合えば」「発令がきちんと行われれば」みたいなところで済みますが、ロジスティック系システムはそんなわけにいかない。トラブルで即、業務が止まる。そして炎上、みたいなシビアさがある。

友岡氏: そうですね。基幹システムをどのように統合するかを考えるときには、いろいろなアプローチがありますよね。私はフジテックが3社目なのですが(1社目は松下電器産業、2社目はファーストリテイリング)、過去の経験から、無理に基幹システムを合わせようとはしていないんです。

データの精度をどう高めていくか

友岡氏: 経営成果をクイックに出そうとすると、やっぱり重要なのはアプリじゃなくてデータなんですよ。生産管理や販売管理のデータは、まずは「今あるものは正しい」として、コンバージョンをかけてでもいいから“あり姿のままでとにかく集める”という形ですね。

 最初にそれをやった上で、「そもそもデータの精度が悪い」とか「データがそろっていない」といった問題を、ある程度可視化してから課題化して、解決する――というアプローチを取った方が、現場納得感を得やすいんです。

中野氏: それは、DWHやBIといった情報系を先に走らせた方がいいということでしょうか。DWH、BIはどんな形で展開していますか。

友岡氏: そこも内製でやっているんですよ。

 現場と製品と顧客に関する全ての情報をグローバルに集めて、1つのデータベースとして確立する。細かいところでのローカルコードなどで違っているものも“いったんは飲み込んで”長いスパンの中で合わせていく――というスタンスですね。私の過去の経験から、このようなスタンスを取っています。

 データのクレンジング処理にも、実際時間がかかります。集めてみたときに「結果的に使えない」という問題が出てくるのも、あらかじめ想定しています。結局、“使えない”という事象の背後には、必ずプロセスの問題があるんですよ。単なるデータの問題ではない。そこにプロセス的なイシュー(考え、論じるべきポイント)を見つけて、解決すべき課題をプロセス視点で見ていくんです。

 「何でこのデータが違っているんだろう」ということを突き詰めると、原価管理の在り方や、そもそもの利益の考え方が違っていたりする。そうしたら、「違っている部分の考え方を合わせていかないといけない」ことが分かる。

 例えば、「コードがきちんとそろっていない」ということは、“言葉の定義もそろっていない”ということになるけど、「データを合わせましょう」という議論をしたところで現場は喜ばないし、本気になってくれないんです。だから、“データを集めた上で使えないことを可視化して、イシューを見定めて解決する”――というように、“ダメさを可視化”した方が早い。

 最終的に目指すところは同じなのですが、あちこちに過去からのレガシーシステムがあるような製造業において、手段と目的が逆転せず、共通の目的に向かって進めていくための作戦の組み立て方は非常に重要ですね。

中野氏: それはとてもよく分かります。私もかつて、メーカーの情シスとして働いていたことがあって、当時、「まずはきちんとデータを合わせなきゃダメだろう」というスタンスでやっていたんです。けれど、これがとにかく進まないんですよね。データの大本である基幹系システムに手を入れることになって投資金額もリスクも大きい。

 そのときに、「これは、先にBIを何とかした方がいいかもしれない」と思ったんです。そこを可視化した上で、納得感を醸成する形にしないと、特に生産とかは動かないですよね。

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